廉価版 CD からの LP をおもわせる匂い
オイゲン・ヨッフム指揮によるブルックナーの交響曲全集を買いました. CD 9 枚で 4000 円以下という価格で,紙のジャケットにはいっています. まだ一部しかきいていないので演奏についてはべつの機会にゆずりますが, 箱をあけたとたん,かつて LP のジャケットからただよってきたような,なつかしい匂いがしました. CD はだいたいプラスティック・ケースにはいっていたので,ここしばらくにおったことがないものです.
オイゲン・ヨッフム指揮によるブルックナーの交響曲全集を買いました. CD 9 枚で 4000 円以下という価格で,紙のジャケットにはいっています. まだ一部しかきいていないので演奏についてはべつの機会にゆずりますが, 箱をあけたとたん,かつて LP のジャケットからただよってきたような,なつかしい匂いがしました. CD はだいたいプラスティック・ケースにはいっていたので,ここしばらくにおったことがないものです.
オーストリアにあるシェーンベルク・センターが,内田光子によるアルノルト・シェーンベルク (Arnold Schönberg) のピアノ協奏曲の断片と,彼女の話をまじえた演奏とを YouTube (ユーチューブ) にアップロードしています. 内田がシェーンベルクの協奏曲を演奏しているということも知りませんでしたが,これは CD になっていることがわかりました (ユニバーサル,UCCP1016). 話は英語であり私はまだその全部を理解してはいませんが,内田がシェーンベルクの音楽をどう理解しているかがうかがえて,興味ぶかいとおもいます.
Naxos (ナクソス) 8.557522 に Arnold Schoenberg (アーノルド・シェーンベルク) の 12 音技法による 2 つの作品,セレナードとオーケストラの変奏曲とがおさめられています.
指揮をしている Robert Craft (ロバート・クラフト) はシェーンベルクの弟子であり,私がシェーンベルクの音楽を最初にきくきっかけになったシェーンベルク全集の大半の合奏曲を指揮しています.
Naxos (ナクソス) は日本人作曲家をふくむおおくの現代曲の CD 化をすすめています.
CD の時代はおわろうとしているようにもみえますが,そのなかで Naxos の仕事はひかっています.
Naxos の American Classics のシリーズのなかに John Adams (ジョン・アダムス) のピアノ曲全集 (Naxos 8.559285) が今年くわえられています.
この CD には Phrygian Gates (1977-78), American Berserk (2001), China Gates (1977), Hallelujah Junction (1996) の 4 曲がおさめられています.
最初の 3 曲はソロ,最後の 1 曲は 2 人のピアニストによる曲です.
とくに最後の曲におけるピアノのかけあいがすばらしいとおもいます.
John Adams (ジョン・アダムス) は私が 1980 年代にはじめて出会った,かずすくない作曲家のうちのひとりです. 当時,日本ではまだほとんど知られていませんでした. いまは CD も入手しやすくなっているとおもいますが,まだよく知られているとまではいえないでしょう. ここでは Adams のいくつかの作品とそのおもいでを書いてみたいとおもいます.
Documents というレーベルによる Great Conductors という 10 枚セットの CD を買いました.
そのなかの 1 枚として, フルトヴェングラーによるモーツァルトのピアノ協奏曲 20 番とベートーベンの交響曲第 6 番がはいった CD があります.
これらをきょう,きいたので,それについて書いてみます.
「フルトヴェングラーによるモーツァルトのピアノ協奏曲 20 番と田園交響曲」 という項目に書いたのとおなじ “Great Conductors” という 10 枚組の CD のなかにアンチェル指揮によるスメタナ 「売られた花嫁」 序曲,ドボルザーク 「新世界から」,ムソルグスキー 「展覧会の絵」 の 3 曲がはいった CD があります.
アンチェル - チェコフィル によるスメタナとドボルザークというのは魅力的なくみあわせですが,その期待にこたえてくれます.
The Essential Sibelius (シベリウス選集) という 15 枚組の CD を買いました.
シベリウスの交響曲,管弦楽曲,歌曲,室内楽曲などがはいっています.
シベリウスの曲は交響曲でもたぶん,これまでに全曲はきいていません.
このシリーズは演奏も録音もよく,シベリウスをききなおす,よいチャンスだとおもいます.
すでに何回かブログに書いている “Great Conductors” という 10 枚組の CD のなかにある Vladimir Delman (ウラディミール・デルマン) による Bruckner (ブルックナー) の交響曲第 9 番をききました.
デルマンというなまえはこれまで知らなかったのですが,ちょっとおもしろい演奏です.
Sony BMG (ソニー ビーエムジー) による “Beethoven Complete Masterpieces” という 60 枚組の CD を買いました (2009 年 9 月現在までに廃盤になったようで,リンクは中古商品につながっています).
まだわずかしかきいていませんが,デイヴィッド・ジンマン (David Zinman) という指揮者,Yefim Bronfman というピアニストによる交響曲とピアノ協奏曲の演奏は,ベートーベンのダイナミックさをちょっと強調しすぎているようにおもえます.
「ベートーベン主要作品集におけるデイヴィッド・ジンマンの指揮」 に書いた 60 枚組 CD のなかの,デイヴィッド・ジンマン (David Zinman) 指揮によるベートーベンの交響曲 9 番をききました. それほど違和感がある部分はなく,バランスのとれた演奏だとおもいました.
ベートーベンは歌劇 「フィデリオ」 のために 4 曲の序曲を作曲していますが,これらを 「ベートーベン主要作品集におけるデイヴィッド・ジンマンの指揮」 に書いた 60 枚組 CD のなかの,デイヴィッド・ジンマン (David Zinman) 指揮による演奏でききました. これらをすこし比較してみたいとおもいます.
“Beethoven Complete Masterpieces” という 60 枚組の CD については 「ベートーベン主要作品集におけるデイヴィッド・ジンマンの指揮」などでも書きましたが,そのなかのピアノ協奏曲 5 番 「皇帝」 をききました. とくに第 1 楽章はティンパニの音が小気味よくひびきます. ティンパニの音がこれだけめだっているこの曲の演奏はきいたことがないようにおもいます. 「ヘンレ版」 のスコアをつかっているということで,まずそこにちがいがあるのでしょう.
あたらしい CD ではないが,数年前に買った CD のなかに Michael Tilson Thomas と New World Symphony による New World Jazz というアルバムがある.
この CD をききながら書いているのだが,演奏にも録音・再生に関しても,いろいろとおもしろいところがあった.
山田耕筰 (Kósçak Yamada) の長唄交響曲 「鶴亀」 などをおさめた CD,Naxos 8.557971J をきいた.
他に 2 曲,いずれも,これまできいたことがなかったとおもう.
「鶴亀」 は日本の古典音楽と西洋のオーケストラとをくみあわせた,はしりのような曲だが,オーケストラのない部分のほうが安心してきける気がしてしまう.
この曲がもっともあたらしいが,むしろ舞踊交響曲 「マグダラのマリア」 (1916) や交響曲 「明治頌歌」 (1921) のほうが魅力的にひびく.
新ウィーン楽派のオムニバス 「新ウィーン楽派作品ボックス シノーポリ & シュターツカペレ・ドレスデン 8 枚組」 (2564 69414-0) のなかにウェーベルンの CD が 1 枚だけある.
ウェーベルンの曲はみじかいし音の数もすくないが,その 1 音 1 音にシノーポリは魂をこめている.
シノーポリはこの 1 音 1 音からウェーベルンの 「精神」 を分析することができたのだろうか?
最近買った新ウィーン楽派のオムニバス 「新ウィーン楽派作品ボックス シノーポリ & シュターツカペレ・ドレスデン 8 枚組」 (2564 69414-0) については 「オープンリール・テープにいれて聴いた時代をおもいだすベルクの曲」 にも書いたが,このなかの CD 1 にあるシェーンベルクの 「オーケストラ歌曲 op. 8」, 「ワルシャワの生き残り」 や 「室内交響曲第 1 番」 などをきいた.
表現主義的な傾向があらわれている歌曲にはシノーポリの 「精神分析的」 な演奏がむいているのではないかとおもった.
新ウィーン楽派のオムニバス 「新ウィーン楽派作品ボックス シノーポリ & シュターツカペレ・ドレスデン 8 枚組」 (2564 69414-0) を買った.
このなかの 1 枚にベルクの 「初期の 7 つの歌曲」,「ワイン」 などの曲がはいっている.
この 2 曲はカセットテープがまだ普及していなかった時代 (40 年くらいまえ) に 5 インチのオープンリール・テープに録音して,くりかえしきいたことをおもいだす.
この 2 曲をつづけて録音していたのだ.
クラシック系の近現代音楽が趣味のひとつだ. これまでもときどき CD 評を書いてきたが,最近,HMV のレビュー欄も充実してきているので,アマゾンと HMV に CD 評を書きつつ,このブログにも書いていくことにした.
1954 年に上海にうまれた作曲家 Ge Gan-Ru の弦楽四重奏曲集である. もっとも最近の作品が 2007 年の 「パグダッド陥落」 だ. この作品にかぎらず,微分音が多用されている. 戦争がタイトルになっていることからも,(トーン・クラスターではないが) クシシュトフ・ペンデレッキの 「広島の犠牲者への哀歌」 などをおもいだす. しかし,解説をみるとジョージ・クラムへのオマージュとして作曲された作品が多いという.
CD: Naxos 8.570603
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
バグダード陥落@Amazon.co.jp,
バグダード陥落@HMV.
Naxos の 8.570604 「華人作曲家系列 Zhou Long and Chen Yi: Wild Grass (野草)」
をきいた.
Zhou Long はかつてのアバンギャルドなど,さまざまなひびきをとりいれている.
洋楽器だけでそれをやれば,どこかできいたひびきにしかならないが,それに中国やアジアの音楽をとりいれ,中国の楽器をとりいれ,中国語のうたとくみあわせたところに新鮮さがある.
Naxos 8.570347 の 「ムーン・ピアノ作品集」 をきいた.
ベアタ・ムーンは 1969 年うまれの韓国系アメリカ女性だという.
ピアノソナタ (2006) をはじめ,計 11 曲の小品が 1 枚の CD におさめられている.
どの曲もどこかできいたような,なつかしいひびきがする.
マルティノンの 2 枚組のサン・サーンス交響曲全集 (EMI 7243 5 85186 2 7, HMV では 911 円) のなかの,交響曲 「ローマ」 をきいた. サン・サーンスの曲として,これまではかぎられたものしかきいてこなかった. この曲もはじめてきいたが,ふたたびききたいという気にはならなかった.
オーマンディとデュトワによるサン・サーンスのこの曲について,べつの項目で書いてきた. デュトワの CD を買うついでに,サン・サーンスの交響曲全曲がはいったマルティノンの CD (EMI 7243 5 85186 2 7) を買った. HMV では 911 円 (これもアマゾンではあつかっていない). 2 枚組でこれはやすい. 1970 年代のアナログ録音なので,デュトワの 1983 年のディジタル録音とくらべるとキレがなく帯域はせまいが,低音のノイズがすくない点はききやすい.
ひさしぶりにきいたオーマンディのサン・サーンスの音のわるさにまいったので,もっとあたらしい録音の CD を買ってみた. デュトワによる 1983 年の演奏は廉価盤 (Decca 467 433-2) になっていて,HMV で 691 円で買うことができたが,オーマンディよりは派手さをおさえて,しみじみときかせてくれた. 録音はもちろん格段によい.
サン・サーンスの交響曲全曲がはいったマルティノンの CD (EMI 7243 5 85186 2 7) のなかで 3 番については 「ゆったりしたマルティノンのサン・サーンス 交響曲第 3 番 「オルガンつき」」 という項目に書いた. この CD のなかのもっとも初期の交響曲 (in A),第 1 番,第 2 番をきいた. 初期の交響曲はベートーベンの影響がつよくて,あまりおもしろみがない. それに対して 3 年後に書かれた第 1 番はベートーベンなどからの影響をかなり脱して独自の世界をきずいている. というわけで,サン・サーンスの交響曲のなかでダントツなのは第 3 番だが,そのつぎは第 1 番!
ロシアうまれでアメリカ在住の作曲家の作品.どちらの曲も tutti になることはなく,しずかにきかせる.第 1 番は小編成のオーケストラであり,ひびきは小編成の室内楽といった感じ.近代的なひびきだが,しみじみきかせる.第 3 番は弦楽器中心でロマン派的かつ単純でわかりやすい曲想.ミニマル・ミュージックとはちがったかたちでの単純さの追求といえるのかもしれない.
Naxos の 21st Century Classics シリーズにはパブロワの他の交響曲もふくまれている.
CD: Naxos 8.557157
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
Alla Pavlova: Symphony@Amazon.co.jp,
Alla Pavlova: Symphony@HMV.
別宮貞雄の交響曲第 1 番と第 2 番をおさめた CD,Naxos 8.557763J をきいた.
別宮はおもに 1960~80 年代に活動した作曲家だが,当時,私の目はむしろ前衛にむいていたので,それほど彼の作品には注目していなかった.
いまふたたびこれらの作品をきくと,構成のたしかさと比較的単純ななかにもくふうされた厚みのあるひびきがめだっている.
この曲にかぎらず,クラムの作品には不思議な魅力がある.1962-68 年に作曲された “Songs, Drones, and Refrains of Death” は男声と打楽器やギターを中心とするアンサンブルのための作品だ.静かな部分がおおくて,一度には 1 ~ 2 の楽器しか鳴っていない.無音の時間もある.しかし,それは憑かれた時間だ.
1994 年に作曲された “Quest” もこういうクラムの音楽の特徴においては変わっていない.
CD: Naxos 8.559290
評価: ★★★★☆
関連リンク:
Songs, Drones, and Refrains of Death@Amazon.co.jp,
Songs, Drones, and Refrains of Death@HMV.
フランツ・シュミットは Naxos がほりおこした近代作曲家のようだ. 生年が 1874 年,没年が 1939 年ということで,リヒャルト・シュトラウスと同時代 (年齢は 10 歳わかいが短命) であり,音楽にもシュトラウスからの影響が感じられる. しかし,シュトラウスの音楽とくらべると歯切れのわるさ,あるいはあいまいさが感じられる. もしかすると,聴きこめばそれが魅力になるのかもしれないが…
CD: Naxos 8.570589
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
Franz Schmidt: Symphony No.2@Amazon.co.jp,
Franz Schmidt: Symphony No.2@HMV.
ロシア人による伊福部 昭.伊福部はゴジラの音楽 (この CD の最後の曲) で有名だが,日本のオーケストラ曲作曲の草分けであり,いまも魅力をうしなっていない. 演奏は日本人による CD のほうがよいだろうが,「シンフォニア・タプカーラ」 をきくと,なぜロシア人がこの曲を演奏したいのかがわかる気がする. つまり,ロシアの音楽に通じているところがあるようにおもう. というわけで,この CD をきくのもまた一興.
CD: Naxos 8.557587J
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
伊福部 昭@Amazon.co.jp,
伊福部 昭@HMV.
1970 年代に販売されていたシェーンベルク全集と同様にロバート・クラフトの指揮による作品集 The Works of Arnold Schoenberg, Vol. 1 のなかの 1 枚: Naxos 8.557524 にオーケストラの 5 つの小品 (Five Pieces for Orchestra, Op. 16) がはいっている.
この曲は音色旋律など,オーケストラの多彩な音色に特徴がある.
全集にあった 1960 年代の録音ではその魅力が十分にでていたとはいえないが,この 1990~2000 年代の録音はそれがよくいかされている.
演奏もまえのものより表情ゆたかである.
おもにロマン派から影響をうけたのだろう劇的な音楽だが,性格のことなる曲想や素材を効果的にかさねていて,ひかれるものがある. ただし,多少ひびきがよごれているようにもおもえる. 曲がかわるとすぐにひきこまれるのは,この作曲家のわざでもあるだろうが,この CD の曲のすぐれた選曲のためでもあるのだろう.
CD: Naxos 8.555266
評価: ★★★★☆
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ブルーザ: 管弦楽作品集 1@Amazon.co.jp,
ブルーザ: 管弦楽作品集 1@HMV.
ショパン全集のなかには当然はいっているピアノ協奏曲. 廉価版なので演奏については解説もほとんどついていない. 1980 年代にしては音質もよくないが,ソ連末期のものなのでしかたがない. オーケストラの音はきくにたえないが,ピアノはそれよりはよい.
ジャケットをみるとエウゲニ・キーシンのなまえがある. Wikipedia をひいてみるとこれが 12 歳でキーシンが最初に録音し CD で発売されて世界で注目されたものらしい. しかし,とくに第 1 番のほうは,とても 12 歳とはおもえない,注目されるにあたいする演奏だ.
これはもう 3 年ちかくまえに買った CD だ. 現在も Brilliant Classics から 30 枚組の全集を Amazon.com から入手することができるようだが,写真にある箱のデザインはかわっている. 演奏がおなじかどうかもわからないが,一応リンクをはっておく.
CD: Brilliant Classics 93217
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
ショパン全集@Amazon.co.jp.
超廉価版の Brilliant Classics シリーズのなかのバッハ作品集. オルガン奏者は Ton Koopman (トン・コープマン). 有名な奏者だが,このオルガンにはてこずっているようすだ. オルガンは “Christian Müller Orgel, Waalse Kerk-Amsterdam” としるされている. ひびきも録音もよいようだが,とくに最初の曲 「プレリュードとフーガ Es-Dur BWV552」 の音はあまりにバランスがわるいし,とぎれとぎれになっている. きっと,とてもひきにくいオルガンなのだろう. それにしても,もうすこし周到に準備し調整すれば,もうすこしなんとかなったのではないだろうか. おなじパッケージの他の CD も Ton Koopman がひいているが,そちらはみごとにひいている.
CD: Brilliant Classics 92391/17
評価: ★★☆☆☆
関連リンク:
Bach: The Masterworks
10 枚あわせて 1000 円で売っていることもある CD だが,録音はわるくない.
このバッハの曲は本来はハープシコード協奏曲だが,ピアノでひいている.
ピアノでひいているのはほとんどきいたことがないので一瞬おどろいたが,それじたいはわるいことではない.
しかし,ピアノでひくなら,もうすこし表情をつけてもよいのではないだろうか?
第 1 楽章はちょっと平板におもえた.
第 2 楽章のほうがうまくひいている.
ピアニストは Mieczyslaw Horszowski という (きいたことがないひと).
指揮は Rudolf Baumgartner,こちらはききおぼえのあるなまえ.
CD: ISBN 3-86562-515-0
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
Great Concertos
独奏のヒラリー・ハーン (Hilary Hahn) 自身が書いている まえがき (Foreword) を読むと,彼女のシェーンベルクの協奏曲に対するただならぬおもいがつたわってくる. 1970 年代のシェーンベルク全集以来さまざまな演奏をきいてきたが,この曲にこれだけの多様性・色彩を感じたことはなかったようにおもう. 私自身,12 音音楽は音楽のゆたかさをいささか,うばってしまうように感じていたが,この演奏はその可能性をひろげ,みなおす機会をあたえているといえるだろう. シベリウスのほうももちろん聴くに値する.
CD: Grammophon 477 7346
評価: ★★★★★
関連リンク:
シベリウス&シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲@Amazon.co.jp,
シベリウス&シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲@HMV.
Membran Music による Mahler 10 CD-Set なるものを買った. 著作権のきれた音源をあつめてつくった CD を 10 枚 970 円で買った. 交響曲と歌曲がおさめられているが,3 番,6 番,7 番はふくまれていない.
録音のふるいのは 2 番の 1924 年. Oskar Fried の指揮,オーケストラは Berliner Staatskapelle. この音はかなりきびしい. SP からの復刻のようでヒスノイズがおおきいのはしかたがないが,録音のバランスがわるいのが気になる. 打楽器の音が異常におおきい. チンドン屋っぽいひびきだ. 演奏はわるくないようにもおもうが, 打楽器のバランスがくずれるといかに曲にダメージをあたえるかがわかる.
1 番は Dimitri Mitropoulos,Minneapolis Symphony の演奏. 1940 年の録音であり,よくはないが,きいて不快になるような録音ではない. しかし,演奏はとても単純であり,マーラーらしい,なぞめいたところがない. 再度ききたいとおもうようなものではない.
リュッケルトの詩による Kindertotenlieder. 2 番といっしょにはいっているので,きょくがかわると録音のよさがはっきりわかる. といっても 1949 年のワルターによる演奏だ. ワルターといえば,マーラーを知って以来これまでコロンビア交響楽団との演奏をきくことがおおかった. 録音はコロンビアとの演奏よりわるいが,ウィーンフィルの演奏はやはりよい.
ほかの曲はまだきいていないので,ここまで.
ジンマンとトーン・ハレによる 2009 年 3 月の録音. SACD にしてはあまり印象的な録音とはいえない. ホールの問題だろうか? 独唱がつよくて,オーケストラの音はおさえられている. マーラーの音楽じたいが独唱をひきたてるように書かれているので,これはおさえすぎで,不満がある. 独唱がはいらない,合唱とオーケストラの部分はバランスよく,とれている.
CD と互換をとらなければ 1 枚にはいるはずだが,2 枚組. それをかさねて収納するようになっていて,あつかいにくい.
CD: Sony (RCA Red Seal) 88697 57926 2
評価: ★★★☆☆
バッハよりまえの時代の作曲家の CD はほとんどもっていないが,Jakob Lindberg のリュート演奏によるダウランドの廉価版を買ってみた. 現代ではリュートをつかうことはほとんどないが,現代の楽器でもっともちかいのはギターだろう. クラシック・ギターの曲は現代でもおおくの作曲家が作曲している. それとくらべても,このダウランドの曲は現代人にとって魅力的だとおもう. 表情に富んだ曲と演奏. 解説にはダウランドの生涯も紹介されている. CD 版を買ってしまったが,SACD 版も値段はそれほどかわらないので,そちらを買うべきだったかもしれない.
ただ,残念ながら,たどたどしい演奏もある. リュートという楽器のむずかしさもあるのだろうが,装飾音がよごれてしまっては装飾の役をはたさない.
CD: Brilliant Classics 93698
評価: ★★★☆☆
関連リンク:
John Dowland: Complete Music for Solo Lute,
ダウランド リュート作品全集 ヤコブ・リンドベルイ@HMV.
約 1 年前の SACD による録音はすばらしい. くもりのない,いきいきとした音だ. しかし,この演奏は冷静にすぎるのではないか? もっとこの曲のなかにひきこんでほしいものだ.
CD: BSO Classics 0801
評価: ★★★☆☆
ベルリンフィルの 1950 年代以前の演奏による 10 枚組を 970 円で買った. そのなかの 1 枚がオイゲン・ヨッフムによるベートーベンの交響曲 3 番.
モノラルであり録音もよくないのはもちろんだが,ていねいに弾きこまれていて,ひきつけられる. 音がわるくても一度はきく価値がある演奏といえるだろう.
録音技術も現在とは雲泥の差があるが,各楽器の音をうまくとらえている.
残念なのは楽章間の時間をほとんどけずってしまっていることだ. あわせて 49 分なのでもっと時間をとることはできたはずなのだが…
Documents LC 12281 (ISBN: 978-3-86735-494-3)
レコード芸術という雑誌は私がこどものころからある. しかし,当時もいまも,たかくて買う気がしないということでも,かわりがない. しかし,アマゾン (Amazon.co.jp) で中古を買うと,月によっては送料をいれても 250 ~ 500 円で買える. 毎月買わないとぬけてしまうことには目をつぶると,これでも,いろいろたのしめることがわかった.
ピエール・ブレーズの指揮とあいまって,内田光子のピアノはこの曲を明晰にえがいている. グレン・グールドの演奏をききなれた私には,いささか耳慣れない部分もあるが,個々の部分をきくかぎりはもっともらしくひびいている. よく聴くと説得力をもっていることがわかる.
しかし,このドラマティックな音楽をより立体的にきかせているのはグールドの演奏であるようにおもう. おそろしい間 (ま),起伏のあるテンポ,それらが彫りのふかい音楽をかたちづくっていく. やはり私はグールドに軍配をあげたい.
最近,オペラの DVD をいくつか買ったこともあり,「つんどく 」していた音楽関係の本のなかから,この 1 冊をひろいだした. モンテベルディからショスタコービッチまで,70 ちかいオペラ作品の DVD や CD が紹介されている. 最近の本だけあって紹介されたメディアの半数は DVD であることが,ありがたい.DVD であれば歌手や舞台がみられるだけでなく,字幕がみられることがおおきい. ただし,字幕がないものや日本語がないものも紹介されているようだ.
バロック時代からとりあげられてはいるが,モンテベルディにしても,解説はみじかく,それらの文章はあまり魅力的でない. それとくらべると,ベルディなど,近代イタリア・オペラの紹介には熱がはいっていて,買いたくなる.
ショスタコービッチまでとりあげてはいるが,プッチーニよりあとのオペラはすくない. ベルクについてもヴォツェックはとりあげているが,ルルはとりあげていない. 日本の作曲家もいろいろオペラを書いているが,それもとりあげていない. 新書としてはすでに 300 ページもあって,これ以上ふやせないのだろうが,もっとあたらしい作品もとりあげてほしかったとおもう.
モーツァルトについてもみじかい解説がおおいが,アーノンクールの演奏をつよくすすめている. 半世紀くらいまえの演奏もすくなからずとりあげられているが,モーツァルトだけでなく,このようなあたらしい演奏をおおくとりあげている. あとがきには,いま,あたらしい演出への変化がおこりつつあり,それを紹介することが目的のひとつだったように書かれている. ふだんはあまりオペラに親しんでいない私にとっては,オペラの現在を知るうえで,とてもよかった.
評価: ★★★★☆
関連リンク:
オペラの名盤@
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オペラの名盤@Amazon.co.jp
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打楽器中心で室内楽的にはじまるジェニファー・ヒグドンの協奏曲の第 1 楽章. ヴァイオリン協奏曲のイントロとしてはめずらしいが,いい雰囲気だ. 冒頭にかぎらず,第 1 楽章は打楽器のひびきがうつくしい.
第 2 楽章は弦楽器が中心のひびきだが,やはり協和的な,なつかしい感じだ. 第 3 楽章はときどき全楽合奏にはなるが,たいていオーケストラはしずかに独奏ヴァイオリンのひきたて役にまわっている. ヒグドンはアメリカでは現代曲のなかでもっとも演奏機会がおおいというが,その理由がわかるような気がする.
チャイコフスキーもていねいに,のびのびとひいているが,特別につよい印象はうけなかった. これみよがしにひかないところがヒラリー・ハーンの演奏のいいところということだろう.
CD: DG 4778777
評価: ★★★★☆
関連リンク:
DG 4778777 @ Amazon.co.jp
このアルバムにはジェニファー・ヒグドン (Jennifer Higdon) の室内曲がおさめられている. ヒグドンという現代作曲家は現在アメリカでもっともよく演奏されるが,もともとフルート奏者として出発したということだ. このアルバムではフルート独奏や合奏の曲を自作自演している. この CD はだいぶまえに買ったものであり,いまは入手困難なようだ.
タイトルになっている最初の曲 Rapid Fire は独奏曲だが,息づかいも荒く,ちょっと余裕のない演奏だ. 名手に演奏させれば,もっとこの曲のよさがでるだろう.
全般に,現代曲のなかでは協和的なひびきだが,そのなかに打楽器などがとけこんで,色彩をそえている.
CD: Virtuosi IVR 501
評価: ★★★☆☆