防波より免波,防災より免災 ?!

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[個人ブログに書いたのとおなじ内容をここにも書いておきます.]

東日本大震災では地震そのものよりも津波の被害が圧倒的におおきかった. 地震に関してはすでに,地震とたたかうというよりも,地震をのがれる 「免震」 のかんがえかたがひろまっている. 津波をはじめとする水害に関しても,スーパー堤防をつくってそれとたたかうのではなくて,津波や水のエネルギーをにがす 「免波」 の方法をかんがえるべきなのではないだろうか. このかんがえかたをひろげれば,「防災」 ではなくて 「免災」 につながっていくだろう.

防波堤は基本的には津波とたたかって止めるものだ. つまり,津波のエネルギーを防波堤が吸収するためのものだ. 防波堤が吸収できないエネルギーを津波がもっているてきは,破壊されてしまう.

どんな津波にもたえられる防波堤をつくるのは困難だから,おおきな津波で防波堤がこわされれば,まちを捨てて逃げるというのはひとつのかんがえかただ. これまで,たいていの場所ではそうしてきたし,いずれにしてもそれは必要だろう.

しかし,地震に対する免震と同様に,津波のエネルギーをにがす方法をくふうすることはできるだろう. 実際,この震災で津波におそわれた場所をみると,被害のおおきい地域とそうでない地域とが隣接しているところがおおいことに気づく. それなら,重要なところでは津波のエネルギーをほかにむければよいだろう. たとえば,避難所がある地域にはエネルギーが集中しないようにする. あるいは,高齢者が住む地からは津波の主力がほかにむかうようにする. そうすれば,かならずしも高台ににげなくてもたすかるだろう.

最近の報道では,各地で高台への移転が計画されつつある. しかし,それは通常時に不便を強いることになる. また,いったん津波がきたときには低地にある建物や設備をすべてあきらめることになる. 技術的にいますぐ解決するこはできないだろうが,免波によって津波にしなやかに対応する,そして醜悪なガレキをつくらないようにするくふうが必要なのではないだろうか.

2011-5-29 追記: 毎日 jp の 「検証・大震災:砕かれた巨大防潮堤(2)」 には,岩手県宮古市田老地区の防潮堤に関して,つぎのように書かれている.

宮古市職員、山崎正幸さん(45)は昨年まで7年間、防災を担当していた。 「防潮堤のもともとの役割は、自然の力に逆らわないよう南北にできるだけ津波を受け流し、避難するまでの時間を稼ぐことだった」

2011-5-7 追記: 吉岡 忍 は朝日新聞出版の 「原発と日本人 100 人の証言 (AERA)」 (p. 62) につぎのように書いている.

1933 年の昭和三陸地震に造られた防浪堤は,津波を食い止めるのではなく堤防に沿って逃がそうという発想で,山に向かって V 字形に築かれていた. その防浪堤を築いていた地域は引き波の力を減じて,たくさんの人名を救っていました. 一方,60 年のチリ津波後に造られた防潮堤は,完全に津波を食い止め,制圧しようという発想で海に向かって V 字形に築かれた. 人々は安心して海岸近くに集落をつくり,今回,津波にさらわれてしまった.

2011-5-8 追記: 政府が招集した東日本大震災復興構想会議の一部として検討部会がある. 第 3 回の検討部会 (4 月 29 日) における藻谷専門委員の発表資料には 「免災 (カラミティプルーフ)」 ということばがつかわれている. その意味は 「どんな天災にあっても被害を最小化でき,何事もなかったかのように復興する国」 だという. 「免災」 を 「免震」 になぞらえている部分もあるが,「防災」 や 「耐震」 までふくむ概念なので,この記事でいっている 「免災」 とは意味がちがっている.

2011-5-22 追記: 復興構想会議第 1 回の議事要旨が最近,公開された. そのなかにはつぎのような記述がある.

もう一点は、自然との対話がとても大事だと思います。今までの考え方は自然と対決するという考え方で、建物にしても堤防にしてもつくってきたと思います。 しかし、対決して耐震型のものをつくっていっても、対津波などにしても、自然はあざ笑うがごとく、それを乗り越えていって、想定外になっていくということです。 だから、それをうまく逃れるというか、自然が暴力でやってきたときは身をすくめて逃げるということも必要だと思う。 そういう意味で、「耐震型社会」 というよりは 「免震型社会」 というようなものをもっと考えていくということが大事だと思います。 これからの復興・再生に当たっても、自然ということの調和・対話を考えたアイデアを出していくということが必要だと思います。

関連項目 (2011-5-5):

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コメント(3)

私も集落を巨大な防波堤で守ろうとする発想には反対です。最近の地質学で地震や津波の影響を受け易い場所や、受け難い場所がはっきり分かる様になっています。こういった情報を活かして、災害に強い地域に100年計画で移転すべきだと思います。移転先も「直近の高台」に限定せず、半径50km程度の範囲で選ぶべきでしょう。

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