アマゾンで 「震災津波の爪痕」 という Kindle 本を 3 分冊でだしている (「石巻編 (上巻)」,「気仙沼編 (中巻)」,「仙台編 (下巻)」). これらの本のアマゾンでの分類は 「社会学」 だ. ちょっと違和感がある.
]]> 被災地で 「取材」 するのは一種のフィールドワークだ. しかし,実際には被災者の話をきく機会はほとんどなかった. フィールドワークは社会学でよくつかわれる方法だ. 被災地にいくとき,できれば被災者の話をききたいとおもった. それをしかるべき方法でおこなえば社会学になるだろうが,そうはならなかった.石巻専修大学にあつまったボランティアとはそれなりに話をしたが,それはフィールドワークではない. 被災した現地のモノはさんざんみて写真をとって出版したが,人間をうつしたのでないそういう写真やその説明を 「社会学」 に分類するのは適切でないだろう.
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著者は東日本大震災をアメリカにつたえてきたジャーナリストだ. 自分がみた震災のすがたと日本の新聞などがつたえたそれとのあいだにギャップがあることを感じている. この本は日本人にはわかりにくい問題点をつたえている点で,価値がある.
日本のマスコミは震災における日本人の行動をほとんどいつも肯定的につたえていたようにおもうが,この本ではエゴイスティックな若者をとりあげている. それが真実なのかどうかには疑問もあるが,そういうケースもあったのかもしれない.
日本のマスコミが遺体の写真をとりあげないことについては私も不満をもっていたが,著者もそれを指摘している. しかし,それがとりあげられないのはそれに日本人のおおくがたえられないからであり,マスコミの側の問題ではないのだろう. こういう,受け手の問題がとりあげられなければ,真の解決にはつながらないだろう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 「本当のこと」を伝えない日本の新聞@Amazon.co.jp.
]]> 注記: Amazon.co.jp の 書評 に投稿しています. ]]>文章はひととおりはいっているのだろうが,ぬけている写真または図が多数ある. つまり,校正した形跡がない. 250 円などという値段をつけて売るような本でないことはあきらかだ.
評価: ★☆☆☆☆
関連リンク: 東日本大震災とおながわ日記@Amazon.co.jp.
]]> 注記: Amazon.co.jp の 書評 に投稿しています. ]]>NHK の番組で,石巻では瓦礫処理に多額の費用がかかっている,それに対してとなりの東松島市では瓦礫の量はほぼおなじなのに 1/8 の費用ですんでいるという話題があった. 石巻では瓦礫を分別せずにあつめた,東松島市では最初から分別していたのが最大のちがいだという. それでおもいだしたのが石巻でボランティアをしたときのことだ. 分別しなかっただけでなく,瓦礫にする必要のないものまでそうしていることがあったのをおもいだした.
]]> 石巻でボランティアした 2 日間のうちの 1 日は,個人宅でかたづけをてつだった. そのとき,瓦礫を分別しなかっただけでなく,まだつかえるものまで,すてていた. 排水溝のうえにかぶせるコンクリート板が,こわれているわけではないのに,本来の位置からまったくはずれたところにあると,それを瓦礫といっしょに捨てているひとがいた. ふたがなくなっている場所がいくつかあるのはわかっていたから,私ならそれをそこに置くだろう. ほかのひとがすてるまえに,そうすればよかった. しかし,放置しているあいだに,ほかのひとがすててしまった.さすがに,瓦礫おきばにひろいにいく気にはならなかった. いったん瓦礫になったものは,もう,ゴミでなくすることは困難だ. それは,分別せずに捨てたものを資源とすることができないのとおなじだ. たぶん,東松原市では,かなりの部分を資源としてあつかうことができたから,費用が石巻の 1/8 にもなったのだろう.
関連項目:
]]>最近,東日本大震災の被災地でボランティアなどで作業をしたひとのアスベスト被害が問題になっている. いまごろ?! とおもってしまう.
]]> 地震や津波で建物が被害をうければ,そこから断熱材がとびだすことは容易に想像できる. 石巻でボランティアをしたとき (「石巻でのボランティアを中心とした仙台から気仙沼への旅行」 参照),フェンスにひっかかった断熱材をみて,アスベストではないかと心配になった. ボランティアをしているとき,断熱材を無造作にあつかうひとをみて,アスベストかもしれないから注意したほうがよいと指摘した.しかし,当時,被災地でのアスベストの危険を指摘する声はきかなかった. もしかするとすでにアスベストはほとんど撤去されているのかともおもった. しかし,いまになってやはり被害がでてきた. アスベストの被害が何 10 年もたってからでてくることがおおいことをかんがえれば,1 年半で問題になるということは,さきがおそろしい.
しかし,自分が書いたブログをみて,私も問題に気づきながらそれをブログにさえ書いていなかったことに気づく. 気づきながらも,もっとおおきな問題に気をうばわれていたということだ. 気づいていながらなにも行動しなかったのは,たぶん私だけではないのだろう.
追記:
当時,私は耳にあるいは目にしたことはなかったが,いま Web を検索してみると,被災地でのアスベストの危険を指摘しているページがみつかる.
以下のものはそのうちのほんの一部である.
国会で原発事故の調査がつづけられている. 当時の政府と東電の当事者たちの発言,かんがえのちがいがあらためてうきぼりにされている. 焦点のひとつは東電が福島第一原発から全員を退避させるつもりだったかどうかだ. 東電がほんとうに全員を退避させるつもりだったとはかんがえられないが,当事者のコミュニケーション能力の不足が誤解と相互不信をまねいたようにおもえる. 危機の際にも適切なコミュニケーションができるように,現場のひとだけでなく政府要人や会社幹部も訓練しておくことが重要だといえるだろう.
]]> 東電の清水前社長は全員を退避させるつもりはなく,最悪のときでも 10 人ほどはのこすつもりだったと証言している. しかし,政府関係者はくちをそろえて,東電が全員を退避させるつもりだとうけとったと証言している.東電が実は全員を退避させようとかんがえていたという仮説を完全に否定することはできないが,常識的にかんがえてそれはかんがえにくい. コミュニケーションがうまくいかなかったために政府に誤解をあたえたとかんがえるべきだろう. しかし,それではなぜコミュニケーションに失敗したのかをかんがえてみよう.
そこでおこったことは,「撤退はありえない」 と首相からつよくいわれて,東電側 (社長) がいいわけせずに,つまり誤解されたままそれにしたがったということだろう. そこでのひとつの原因は政府の側とくに菅首相の,相手に説明する余裕をあたえない,はげしいことばにあるだろう. こういう危機のときでも相手から必要な情報をひきだして,誤解や不信を増幅させないようなコミュニケーション・スキルが首相や他の政府関係者に必要だったといえるだろう. これは首相だけの問題ではなくて,首相が十分に対応できなければそれを脇からささえる必要があったということができる. ひとりの人間に全部を依存してしまうとすると,あまりに危険すぎる.
だが,政府側が十分に対応できなかったとしても,東電側は必要なことは説明するべきだったはずだ. なにも説明せずに首相にしたがったことで,誤解と不信をうみだしてしまった. 相手がどんな調子でせまってきていても,また相手がだれであっても,うまく説明するコミュニケーション・スキルが必要だったといえるだろう. 東電側も,社長がコミュニケーションに失敗したらほかのひとがそれをささえる必要があったということができる.
危機の際のコミュニケーション能力に関しては,当時の枝野官房長官がスポークスマンとしてたかい能力を発揮したこともわすれられない [3]. しかし,その枝野も東電とのコミュニケーションに関しては失敗したといわざるをえない. スポークスマンとしての枝野の成功は通常時のコミュニケーション能力をいかしたものであり,危機の際のコミュニケーション能力を訓練していたわけではない.
危機がおこったあとではないが,危機につながるコミュニケーションというと,同様に失敗例としておもいだすのはスペースシャトル 「チャレンジャー」 の事故だ. 事故につながる兆候はいくつかあったものの,事前にそれをとらえることができずに,事故がおこってしまったという (たとえば [1][4]). 危機を回避するため,また危機がおこったあとにうまく対応するためには,それを意識したコミュニケーション能力の訓練が必要だろう.
こうした危機の際のコミュニケーションに関しては,スペースシャトル 「チャレンジャー」 や 「コロンビア」 の分析 [1] からもわかるように,アメリカでは分析・研究がすすんでいる. それに対して日本では危機とくに災害の際のコミュニケーションの分析・研究がおくれていることが指摘されている [2].
13 人の専門家による提言集だ. 経済の専門家が多く,内容も経済と原子力に関するものが多い. 復興庁を東北につくり,いずれは東北州の州政府にするのがよいという意見もある. 私自身もそれがよいとかんがえていたが,復興庁はそうはならず,政治の改革もできなかった. これをふくめて,実現されていない,またこれからもされそうにない内容が多い.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 震災からの経済復興@ , 震災からの経済復興@Amazon.co.jp.
]]> 注記: BK1 の 書評 と Amazon.co.jp の 書評 に投稿しています. ]]>高橋是清の財政を検証し肯定して,それと比較して東日本大震災後にとるべき政策として国債の日銀ひきうけを主張している. 高橋財政に対しても評価しない意見がすくなくないが,それ以上に,当時と現在との世界経済の差をかんがえると,「高橋財政の成功」 が,いまとるべき政策を支持する理由にはならないようにおもえる.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 経済復興@ , 経済復興@Amazon.co.jp.
]]> 注記: BK1 の 書評 と Amazon.co.jp の 書評 に投稿しています. ]]>17 人のひとがみた,それぞれの東日本大震災について書いている. そのなかには津波におそわれた直後の凄惨な現場の様子もある. 遺体にかぶせられたブルーシートをはずして写真をとるカメラマンもえがかれている. 震災関連のニュースを見聞きし,本も相当数読んできたが,この本のなかにはまだそのなかになかったことがいろいろとえがかれている.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: わたしの 3.11@ , わたしの 3.11@Amazon.co.jp.
]]> 注記: BK1 の 書評 と Amazon.co.jp の 書評 に投稿しています. ]]>