2011年9月 アーカイブ

[個人ブログから転載します.]

被災者やバーチャル被災者は 「災害ユートピア」 という本にも書かれているように,災害後 1 〜 2 ヶ月は 「ハネムーン期」 とよばれるハイな状態になるが,その後は幻滅期,再建期を経て通常にもどるという. この本はその幻滅期以降にとるべき対応などについて書かれている. 9 月に出版されているが,もっとはやく出版されていればこの震災でももっとやくにたったのだろう. タイトルをかえて,今後おこる災害へのそなえるための本とすればよいのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

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東日本大震災における被災者の秩序だった行動は世界に感銘をあたえた. しかし,この本は災害時にはおおくの場所で,たがいにたすけあい,自分がもつものすべてを他人にあたえ,金銭が機能しなくなるユートピアのような状態が生じると主張している. 例としてとりあげられているのはハリケーン・カトリーナやサンフランシスコ地震や 9.11 などだ.

それとともに,被災者への不信感をもつマスコミやエリートたちがそういう世界を破壊する行為をすることを主張している. 軍隊や警察が窃盗をはたらいていないひとを射殺したり,こわれていない家を破壊したり,避難やボランティアをさまたげたりするという. アメリカで被害にあうのはおもにアフリカ系アメリカ人であり,ふだんはおさえられている偏見や差別が顕著なかたちであらわれる.

日本と海外の市民にちがいがあるからではなくて,日本ではそういう対立関係がないことが,略奪や殺人のデマの発生をおさえ,カトリーナやサンフランシスコ地震などとのちがいにつながっているのではないだろうか. 400 ページをこえるこの本は,そういったことをじっくりかんがえる時間をあたえてくれる.

評価: ★★★★☆

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[個人ブログから転載します.]

現代思想の臨時増刊の 「震災以後を生きるための 50 冊」 のなかで,すくなくとも 4 人がレベッカ・ソルニットの 「災害ユートピア ― なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか」 をとりあげている. この本の内容と東日本大震災とはかならずしもかさねあわせられているわけではないが,それでもこの本をとりあげているのはそれだけの内容があるとこの臨時増刊の著者がかんがえたからだろう.

[個人ブログから転載します.]

放射線や放射能とはどういうものか,放射線は人体にどういう影響をあたえるか,ホルミシス現象とはなにかなどという話題に比較的コンパクトでもっともよくこたえてくれる本だといえるだろう. 低量放射線はそれほどおそれる必要はないということだ. ホルミシス現象に関するおおくの本のあやしげな記述とくらべると,この本の記述は信頼できる.

2002 年に書かれた本だから,あらさがしをすれば,いまとなっては適切でない記述をみつけることができる. しかし,おおくの本とくらべると原発に関してもより客観的に書かれていることがわかるだろう.

評価: ★★★★☆

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東日本大震災に関してもつぎの災害へのそなえに関しても,すでにさまざまな議論がなされている. 著者もおおくの部分でそれをなぞっている. あたらしい防潮堤より 「減災」 をめざしたふるい防潮堤のほうが効果的だったこと,避難のこころえ,などなど. しかし,とかく死者を美化したがる風潮に対して,著者は死者がどういう失敗をしたのかを検証しようとしている. ひとびとに津波の危険をしらせながら死んでいったひとについても,いきのこる方法がなかったのかをかんがえるべきだという. 原発事故に関しても東電や国を罵倒して 「ガス抜き」 しているひとを批判し,現状では不十分な台風へのそなえに関しても言及している. 災害に対する著者のかんがえには,まなぶべき点がおおい.

評価: ★★★★☆

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[個人ブログから転載します.]

東日本大震災時にツイッターやフェイスブックなどのうえでなにがおこったかを分析している. 具体的なエピソードとしては,東京都の猪瀬副知事がツイッターをみておこした 2 つの行動,ユーストリームによる NHK 放送の再配信などがとりあげられている. デマ (流言蜚語) の問題にも 50 ページくらいをついやしている. すでに読んだことがある話題が大半であり,分析の内容にもそれほど新鮮さはないが,分析の努力には敬意を表したい.

評価: ★★★☆☆

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寺田寅彦の随筆は東日本大震災以来しばしば話題になる. 気になっているところに,まとめなおされて文庫として出版されたので,読んでみた. 内容は津波などの天災とくに関東大震災や国防,流言蜚語,日本人の自然観などに関する随筆集だ. そこではたしかに,著者の科学的知識と日本文化への理解とが調和している. しかし,自分の体験をそのまま書いたり,とくに調査したりせずに記憶にしたがって書いていることが,現代において特に有用なわけではない. どれもみじかい随筆なので,それほど深く追求しているわけでもない. かるいきもちで,過去のひとりの科学者のかんがえかたをなぞり,震災のひとつの記録を読めば,それなりにえるところがあるだろう.

評価: ★★★☆☆

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[個人ブログから転載します.]

現代思想 2011 年 5 月号の東日本大震災特集でも感じたことだが,この本を読んで,東日本大震災に関して哲学あるいは哲学者が無力であることをあらためて感じる. 佐々木 中 は震災に関して発言すべき 「知識人の責任」 があるかのようにいう圧力に反発しているが,これはこの本の企画への批判ともいえるだろう. 加藤 典洋 は,吉本 隆明 に影響をうけてきたが,いまは 池田 清彦 など,理系のひとの発言により,ひかれているという. これらはみずから無力をみとめているようなものだろう. なかには世間のトンデモ発言にまどわされているひともいて,ひとさまざまだが,いずれもあまり読むに値するとはおもえない.

評価: ★☆☆☆☆

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