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0001-01-01

tetu_bn_161.gif 書評・読書カテゴリーには私が Amazon や BK1 に投稿した書評や,本について書いた文章をあつめています. 以前はすべての書評をひとつのページにいれていましたが,書評の数がおおくなり,書評・読書カテゴリーのページがながくなりすぎたので,書評・読書カテゴリーを分割しました. 書評以外のカテゴリーにあわせて, Web とインターネット仕事と起業メディア・アート・イベント・エンターテイメントインタフェース,アメニティとデザイン思想・哲学・宗教情報学・計算・プログラミング政治・法律・憲法教養・教育と学習歴史環境生活知的生産とリテラシー社会・経済秘密・プライバシー保護とセキュリティ言語・コミュニケーションとネットワーキング というように書評を細分するようにして,書評カテゴリーのページにはそれらに分類しづらいものをあつめました. なお,このページは各カテゴリーのページの先頭に表示されるように,意図的に投稿日時を 0001-01-01 00:00:00 としてあります (実際の投稿日時は 2007-11-03 10:39 です).

2006-04-14

この本の後半には本多勝一とイザヤ・ベンダさん (山本七平) の公開討論が収録されている. この本が出版されたときには,まだ本多のバカさ加減を見抜くことは難しかったのだろう. まだ文化大革命が続くなかで 「今の中国へ行く人が,予備知識として第一に何を勉強すべきたか考えたら [中略] まず 「階級」 とは何かを徹底的に知ることだと思います」 という主張に疑問をもつことはできなかっただろう. しかし,いくら当時でも 「私たちは,多少はスジの通った考え方のできる者であればだれでも知っている. 天皇制などというものは,シャーマニズムから来ている未開野蛮なしろものだということを」 という意見が妥当なものだったとはおもえない. 山本七平はこうした本多の主張にていねいに反論している. いまからみれば,どちらがただしかったかは,あきらかであろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 殺す側の論理@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)

つづく…

2006-05-14

この本は,ゴルバチョフからエリツィンに主役が交代する時期に,ロシアがかかえる,ひとことではいえないさまざまな問題をあつかっている. とくに,のちにプーチンをも苦しめることになる生産・流通の問題点などを分析している. とくに印象にのこったのは 「資本主義との対決に一喜一憂する中で,我々は何世紀にもわたって人類が創り上げてきた多くのものの意義を明らかに過小評価したのである」 というゴルバチョフのことば (p. 74) である. このことばは,「資本主義」 や 「人類」 を日本をとりまく局所的な文脈でよみかえることによって (たとえば 「人類」 を 「日本人」 とよみかえることで) 破壊的なマルクス主義の影響からぬけだしていない現在の日本にも警鐘となるであろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ロシアの悲劇@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)

つづく…

2006-05-15

3 つの章のうち 2 つはソビエト崩壊の予測に関係している. しかし,3 章では突然,日本の非武装中立論を批判している. 1990 年前後の小室直樹の本は饒舌で脱線が多いが,それにしても…

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ソビエト帝国の崩壊@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)

つづく…

最初の何章かは従軍慰安婦問題,東京裁判の問題など,すでにほかの論者によってさんざん書かれている内容である. そのなかには 「選挙コンプレックスがニクソンの生命取りになった」 (p. 113) というような,おもしろい話がちりばめてあったりはするものの,あまり新鮮さは感じられなかった. 3 章からは日本資本主義の分析など,小室らしい話題が登場するが,私にとってもっともインパクトがあったのは第 4 章 「なぜ,天皇は 「神」 となったのか」 である. 最近は教育勅語が現在でも有効な常識的な内容だとする意見が多くなっているが,小室によれば教育勅語はキリストのような現人神である天皇が儒教にはないまったく新しい規範を説いたものであるという. これぞ小室天皇教の真髄であり,逆にいえば教育勅語の “復活” に注意が必要だということでもある.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本国民に告ぐ@ [bk1]日本国民に告ぐ@Amazon.co.jp

つづく…

2006-05-25

著者は戦国時代から明治時代にいたるまでのさまざまな武士道を比較しつつ論じている. 「明治武士道」 というと新渡戸や内村などのキリスト教徒の思想が有名だが,この本では当時むしろ優勢だったが 「敗戦とともに忘れ去られた」 井上哲次郎らの国家主義者による明治武士道についても論じている. この本でもくわしく論じられてはいないが,いま,敗戦とともにうしなわれたものをほりおこすことが必要であり,このような明治武士道もほりおこすべきもののひとつなのではないだろうか.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 武士道の逆襲@ [bk1]武士道の逆襲 @Amazon.co.jp

つづく…

2006-06-03

宮台真司の本には粗雑なものが多い. この本に関しても他のレビューで誤字脱字の多さや注釈がないことが指摘されている (注釈がある本でも場違いなことが多い). たくさんのひきだしのなかみをチラチラとひけらかしてくれて,つまりカタログ的にいろいろなことが書いてあるので,それをヒントにかんがえたり,ほかの本を読んだりすることはできるが,この本だけ読んでも宮台のように知識がない私には,それらの断片を理解することができない. もっと,だれでもわかるように,ていねいに書いてほしいものである.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 亜細亜主義の顛末に学べ@ [bk1]亜細亜主義の顛末に学べ@Amazon.co.jp

つづく…

2007-08-10

「大論争」 というと,国民の権利のありかたや,憲法における天皇や国政組織のかたちなどについて論争がくりひろげられるさまを想像してしまう. ところが,この本のおもな内容はそれとはまったくちがっていた. 日本国憲法はマッカーサーがきめたのか国会がきめたのか,国際法上有効なのかどうか,などなど,憲法の制定過程などに関する議論がほとんどである. 民主主義にとって手続きが重要であることはもちろんだが,もっと内容に関する議論が必要なのではないだろうか.

この本の解説のなかにも 「この 50 年間,憲法改正 (中略) の論議が深まったということはなかったのである」 とかかれているが,それはいまだに議論のおおくが具体的な憲法の内容にふみこまずに,手続きなどに関する不毛な論争をくりかえしているだけだからではないだろうか. もっと条文の内容にたちいって議論しないかぎりは,いつまでたっても議論はふかまらず,日本の民主主義もふかまらない. そして,気がついたら,むりやり国民投票にかけられているということになりかねない.

こういう “からっぽの議論” が 50 年前にはじまっていたことを確認する意味で,この記録は貴重なものだといえるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 50 年前の憲法大論争@ [bk1]50 年前の憲法大論争@Amazon.co.jp

つづく…

2007-08-16

8 月 12 日に NHK で 「鬼太郎が見た玉砕」 を見た. これは水木しげるの 「総員玉砕せよ!」 (集英社板講談社文庫版) にもとづいていて,水木によれば,ラバウルでの体験を 「90 パーセント事実に基づいて」 書いているが,一部,脚色された部分がある. 水木の作品にはより経験に忠実に書いた 「水木しげるのラバウル戦記」 もある (Web 上の 「水木しげる伝」 にも同様の内容が書かれている).

すでに Web 上にいろいろな番組評,書評が書かれているが,そのおおくは戦争の悲惨さ,二等兵の悲哀などについて書かれている. しかし,私がもっともつよく印象づけられたのは,名誉のため玉砕を志向する大隊長とそれを避けて兵士たちをすくおうとする中隊長のはげしい対立,そして一時的にはすくわれた兵士たちが結局はメンツを重視する参謀によってふたたび玉砕をしいられるところだった. とくに,前者には 「武士道」 とのつながりを感じてしまう. この部分に注目している評がないことがむしろ,ふしぎである.

つづく…

2007-09-16

日本の歴史とくに大東亜戦争をみなおそうといううごきが,「新しい歴史教科書をつくる会」 をはじめとして,さかんになっています. みなおしを主張するひとたちが問題にする点のひとつは,「南京大虐殺」 をうつしたとされる写真のおおくが虚偽にみちたものだという点です. この戦争に関するおおくの本のなかでその真偽が議論されています. しかし私は,戦争とは直接の関係がない本のなかでこの問題に関連する記述があることを発見し,重要な論点を提供していると感じました. それは,今野 勉 の 「テレビの嘘を見破る」 という本です.

つづく…

2007-09-19

2007 年 8 月 12 日に NHK で放送された 「鬼太郎が見た玉砕」 というドラマの原作である. 戦争や死,病気などが日常化した戦場の世界がえがかれている. ドラマではより戦争の非情さが強調されていたようにおもうが,この本のなかに登場する人物たちはより人間的であるようにみえる. 玉砕するはずだったがいきのこった小隊長たちもドラマよりは温情的にあつかわれているようにみえる. しかし,それは著者のやさしさからでた表現なのかもしれない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 総員玉砕せよ!@ [bk1]総員玉砕せよ!@Amazon.co.jp総員玉砕せよ!@Amazon.co.jp

つづく…

2008-03-07

この本は、最近多数出版されている自虐史観のみなおしに関するものである. 米軍の占領政策のなかで日本人が洗脳されたという指摘はすでにさんざん読まされているが,この本では日本が戦前あやまった方向にふみだすにあたっても,また戦後の占領政策も最近の 「ジェンダーフリー」 運動も 「社会主義」 に影響されたと主張している. なにもかも 「社会主義」 のレッテルをはりつけてしまうことで真実をかくしているようにおもえる.

とはいえ,大陸における戦争の一因をもともと日本の弱腰外交,英米と協調した出兵をしなかったことなどをもとめている点などは,きくに値するようにおもえる. 弱腰ではかえって戦争をまねいてしまうということはドイツに対する各国の対応でもいえることであり,現代日本にもあてはまるとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本人としてこれだけは知っておきたいこと@ [bk1]日本人としてこれだけは知っておきたいこと@Amazon.co.jp

つづく…

2008-03-19

ちかごろの本はただ平易でよみやすくするばかりで,味わいのない文章がおおい. それに対してこの本の著者は 「本を大量に読み,文章を膨大に書きなぐるという過程を子供の頃から無意識で繰り返しては来たのだが,文章に味わいや品格というものがどうにもこうにも涌いてこない」 と書いてはいるものの,この本はひと味ちがっている. また,通説にとらわれず,2 ちゃんねらーについても小林秀雄や藤原正彦も独自に理解しようとしている. 疑問の点も多々あるが,得るところもある本である.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 新しい神の国@ [bk1]新しい神の国@Amazon.co.jp

つづく…

2008-10-08

戦争ビジネスに関する本としては,戦争請負企業を中心としたものから個人の体験を書いたものまであるが,この本は両方をカバーしようとしている. 日本人がこの問題に興味をもつようになったきっかけはイラクで戦死した斉藤さんのニュースだったが,そこからはじめて,部隊の劣悪な環境,古代からはじまる歴史,アフリカやアジアの紛争地でのできごとなど,戦争ビジネスを概観するには適当な本だろう. 太平洋戦争やベトナム戦争に関しても,あまり知られていないエピソードがふくまれていて,興味ぶかい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 戦争民営化@ [bk1]戦争民営化@Amazon.co.jp

つづく…

11 の章からなる本だが,各章は独立の論文であり,タイトルの 「民営化される戦争」 に関する章はおおくはない. 議論はあまりていねいとはいえず,裏付けが書かれていない記述もおおい. MPRI という戦争請負企業に関しては,クロアチアでセルビア人を 10 万人も殺害してしまったという噂も書かれている. 「噂」 と書いてあるからよいようなものだが,論旨が噂に影響されるのはどうかとおもう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 民営化される戦争@ [bk1]民営化される戦争@Amazon.co.jp

つづく…

2008-11-06

この本は 「満州国」 について,また満州における日本人の功罪について,公平に記述しようとしている. また満州だけでなく,当時の日本や中国,ソ連などの状況についても書かれている.

満州の状態に関しては,治安がわるく,調査団もおもうように調査ができないことが書かれている. 匪賊によってしばしば鉄道が爆破されること,朝鮮人による日本の著名人などの暗殺が横行していること,とくにリットン調査団員の暗殺計画があったことや団員をまもるために多数の警官が動員されたことについても書かれている.

日本人やその行為に関しては,つぎのようなことが書かれている. 日本人がチチハルの住民に対して新しい支配者としてふりまっていたこと. 「満州にいる中国人は [中略] 「満州国」 に対し,ほとんど例外なく敵対感情を抱いていた」 こと. また 「いまから百年前ならば,おそらく中国を征服して,ここに大帝国を建設することができたかもしれない」 が,当時は 「日本が独占的に中国を支配しようと試みても,単に中国民衆の抵抗に遭うばかりか,中国に利権をもつ各国から反対されるであろう」 と書かれている.

日本人の大陸における農林業への貢献についても書かれている. たとえば,「朝鮮人は植林もせずにやみくもに森の木を伐った.[中略] 日本人は,日本の政権が禿山に植林した業績を誇っている」.

政治的にも経済的にも混乱する日本の様子もえがかれている. たとえば政治に関しては狂信的な国家主義者によって浜口首相,井上元蔵相,犬養首相らがつぎつぎに暗殺されたこと,国民世論もこうした穏健な政治家の退陣をせまっていることが書かれている. また,農業に関しては日本人が朝鮮の稲作を発展させたこととあわせて,はげしい朝鮮米と内地米の競争や世界恐慌などから農業危機がもたらされたことが書かれている.

ソ連の行為に関しても,シベリアの住民が悲惨な目にあい,数千人の餓死者がでていること,満州に逃げのびたひとびとを中国の将軍がソ連にひきわたし,ボルシェビキに射殺されたことなどが書かれている.

最近,日本では東京裁判以降にひろめられた歴史観とともに,それを否定し大東亜戦争に価値をみいだそうとする 2 つの派があらそっているが,両極端にはしっているようにみえる. この本のように,生の中立的な立場の記述からまなべることはすくなくないとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「満州国」見聞記@ [bk1]「満州国」見聞記@Amazon.co.jp

つづく…

2009-03-05

従来の見方にとらわれず,さまざまな面から満洲国をとらえようとしている. 張作霖,張学良などの奉天軍閥の再評価,日本から進出した農家や商人が商売上手な中国人に勝てずに失敗したこと,農業技術の革新ができなかったこと,最近の回想録の傾向など,いろいろ興味ぶかい. 内容がさまざまなぶん感想もまとめにくいが,そういう道教的 (?) な世界だったということだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 〈満洲〉の歴史@ [bk1]〈満洲〉の歴史@Amazon.co.jp

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2009-03-26

2 年ほど前にグアムに行った. 本書でも紹介されているモール内の博物館には行ったが,ガイドブックにも書いてないので,グアムの歴史につながる他の場所には行かなかった. それは,うすっぺらな旅行だったようにおもう. 本書はそういう 「かくされた場所」 をみせてくれる. レジャーをたのしむ日本人は知りたいとおもわないことかもしれない. しかし,現在のグアムの問題点までカバーしている本書は,グアムを観光するときにも 「厚み」 をあたえてくれるのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: グアムと日本人@ [bk1]グアムと日本人@Amazon.co.jp

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2009-03-31

白洲次郎が文藝春秋などの雑誌にのせた文章をまとめた本である. 日本国憲法の成立,戦前や米軍占領下の政治にかかわった著者が,政治や政治家などについて,きわめて率直に,あるときは弱点もさらして,書いている. 憲法についてかんがえるときにも,参考になるだろう.

現在の雑誌にこのような文章をのせたなら,たちまちひどい攻撃の対象になってしまうのではないだろうか. プリンシプルの有無をいう以前に,そこに現代の問題を感じてしまう.率直に表現し,率直に読むことをまなびたい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: プリンシプルのない日本@ [bk1]プリンシプルのない日本@Amazon.co.jp

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2009-04-04

朱鎔基は中国に市場経済を根づかせ 「資本主義を不言実行」 した,もっとも注目するべき指導者である. にもかかわらず,日本ではあまり有名だとはいえないのは,著者によれば日本のマスコミが 「痴呆状態」 だったからだという. それでも 1998-2000 年ころには日本でも朱鎔基をとりあげた本が何冊か出版されていた. しかし,私自身,最近まで朱鎔基に注目していなかったので,これらの本も目にとまっていなかった.

江沢民が中国のナンバーワンだったことは,もちろんよく知られている. 江沢民がみいだされたのは天安門事件がおこったとき上海ではおおきな混乱をおこさずにすんだためだというが,それも朱鎔基がいたからだという. 市場経済化にあたっても地域ごとに具体的な指示をだし正確な数値の報告をもとめたという. また,自分がだした指示にあやまりがあればすみやかにそれをみとめて補足したという.

私はまだ朱鎔基に関する本をこれ 1 冊しか読んでいないので,これが彼を知るのに最適かどうかはわからない. しかし,この本を読めば朱鎔基がどういう人でありどういう経済政策を実行したのかをいろいろな角度から知ることができる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「朱鎔基」@ [bk1]「朱鎔基」@Amazon.co.jp

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最近没した加藤周一を (サヨク中心に ?) たかく評価するひとがおおいので,あらためてその著書を読んでみようとおもった. 20 世紀は最後の何年かをのぞけば社会主義と資本主義との対立の時代だった. だから,「20 世紀」 をタイトルにかかげる本書が社会主義を最大のテーマとしているのは当然のことだろう. アメリカ中心の新自由主義がくずれたいま,もう一度,社会(民主)主義をみなおす必要があり,この本もそれにやくだつかもしれない.

しかし,この本で議論されているのは理念であって,現実の経済や社会をよくみていない. 著者が太平洋戦争に反対してきたのは 「実際の情報に通じていたからではなく,[中略] 価値判断であって,これは事実判断ではなかった」 という. 事実を把握できない状態では事実にもとづかない価値判断をせざるをえなかったということであって,やむをえないことだったのであろう. しかし,著者は現代のでぎごとについても,知ることができるはずの事実をみないまま価値判断をしているようにみえる. とくに,20 世紀は経済の時代でもあり情報化の時代でもあったのに,それらにほとんどふれないままになっているので,「私にとっての 20 世紀」 ではあっても,「みんなにとっての 20 世紀」 にはなりえないだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 私にとっての20世紀@ [bk1]私にとっての20世紀@Amazon.co.jp

つづく…

2009-04-05

加藤周一には 「私にとっての20世紀」 という著書もあり社会主義や戦争を中心に議論されているが,「20世紀の自画像」 では戦争はとりあげられているが社会主義はおおきなテーマにはならず,かわりに文学中心の 「戦後思想」 がとりあげられている. プロローグでは科学技術もとりあげられているが,本文ではテーマとなっていない.

本文第 1 部は成田龍一によるインタビュー,第 2 部は成田による解説となっているが,いずれもいくつもの話題のあいだで焦点をうつしながら論じているため,あまり迫力が感じられない. 著者は加藤ひとりということになっているが,議論のながれをつくっているのは成田である. 加藤自身の著書を読むほうがよいとおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 20世紀の自画像@ [bk1]20世紀の自画像@Amazon.co.jp

つづく…

2009-04-16

現代中国においてもっとも注目するべき指導者である朱鎔基が首相になるまでをえがいている. 日本で出版された朱鎔基に関する本はほとんどが 1998~2000 年に出版されているが,この本は 1998 年であり,重要な部分が欠けていることが惜しまれる. 比較的淡々と書かれていて迫力はないが,朱鎔基と他の中国指導者とくに鄧小平との関係,日本の政治家との類似点などが比較的くわしくえがかれている.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 朱鎔基の中国改革@ [bk1]朱鎔基の中国改革@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-10

「図解雑学」 シリーズには雑学らしからぬ本が多いが,この本は日本史のなかのさまざまなエピソードをあつかっていて,もっとも雑学らしい. ただし,大半は江戸時代に関するエピソードであり,そのなかでもとくに武士のことが多い.

また,このシリーズではたいてい右ページは図や絵になっているが,この本はちがっていて,右ページもほとんど文章でうめつくされている. つまり,「雑学」 ではあっても 「図解」 ではない.

とはいえ,江戸時代の武士のエピソードに興味があるひとにはよいだろう (私はそうでないのでハズレだったが…).

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 誰も知らない日本史の真実@ [bk1]誰も知らない日本史の真実@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-29

東京大空襲よりまえ,ゲルニカ空襲の直後に日本軍による重慶の無差別爆撃が 3 年間にわたって,おこなわれた. 明白な国際法違反だったにもかかわらず現代日本でそれが知られていないひとつの理由は,アメリカが東京裁判でとりあげるのをのぞまなかったからだという. 南京虐殺を議論するのもよいが,日中戦争にはほかにも重大な問題があったことを,この本はおしえてくれる. 重慶爆撃はその後の対米戦争にも影響をあたえているだろうし,なによりも,この問題にふたをしたままでは真の日中友好はありえないようにおもえる.

評価: ★★★★★

関連リンク: 重慶爆撃とは何だったのか@ [bk1]重慶爆撃とは何だったのか@Amazon.co.jp

つづく…

2009-06-09

重慶爆撃は日中戦争の重要な部分であるにもかかわらず,あまりとりあげられることがない. 書籍としては 「重慶爆撃とは何だったのか」 のほうが手ごろだが,そこからはわからないさまざまな点がこの本によってあきらかにされる. この日本軍による執拗な無差別爆撃によって重慶やその市民がどういう被害をうけたかはもちろんのこと,ゲルニカにはじまり東京大空襲や広島・長崎につづいていく無差別爆撃のなかでの重慶爆撃の位置づけや,現在も尾をひいている中国人の対日感情,日米戦争への影響なども論じられている.

2 段組で 640 ページにわたってぎっしりと書かれた本ではあり資料価値はたかい. しかし,ひとつ不満があるのは,ほとんど個別的な情報が収集されているだけで,統計がわずかしか書かれていないことである. 過去の一地域に関する統計をあつめるのは困難だろうが,もうすこし情報をあつめることはできなかったのだろうかとおもう. 「重慶爆撃とは何だったのか」 にはいくつかの統計がふくまれているので,補足することができる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 戦略爆撃の思想@ [bk1]戦略爆撃の思想@Amazon.co.jp

つづく…

2009-06-28

第一次世界大戦以来の無差別爆撃の歴史を欧米中心にえがいている. 第一次大戦におけるドイツとイギリスの爆撃合戦に端を発し,イギリスでそだてられた無差別爆撃の思想がやがてアメリカにもひきつがれ,東京大空襲や広島・長崎につづいていく.

日本も重慶などへの無差別爆撃を長期間おこなったことが知られていて,この本でも 「はじめに」 でそのことにふれられているが,あつかいはちいさい. 日本を加害者としてよりは被害者としてみている点で,従来の戦争史と同様である. 無差別爆撃被害者としての日本をおおきくとりあげている以上は,加害者としての面についてももうすこしページをさくのでなければ,バランスがとれた記述にならないとおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 空の戦争史@ [bk1]空の戦争史@Amazon.co.jp

つづく…

2009-08-24

タイトルだけでなく内容においてもいわゆる 「村山談話」 にこだわりがあるが,「村山談話」 についての本というよりは,村山 富市 というひとがどういう政治家だったのかをあきらかにしてくれる本といえるだろう.

総理大臣になるとはまったくかんがえられていなかったひとが総理大臣になり,後藤田正晴によれば 「保革の対立の中でやらなければならないけれどできなかった仕事 [中略] がある内閣のときに解決したんです」 というだけの仕事をした. しかし,この本を読んでもやはり一方では総理になるはずでなかったひとがなったことによる限界も感じとれる. 「村山談話」 もそのどちらであったのかは,ひとによって評価がわれるということなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「村山談話」 とは何か@ [bk1]「村山談話」 とは何か@Amazon.co.jp

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2009-10-24

日本人は 「終戦」 というできごとを日本だけのこととしてうけとってしまう. それによって 「大日本帝国」 が崩壊し,東アジア全体が影響をうけたことをわすれてしまっている. 著者は 「大日本帝国」 が影響をあたえていた南太平洋からタイ,インドにいたる東アジア全体がその崩壊によってどういう影響をうけたのかを分析しようとしている.

そこまでかんがえるのが,「大東亜共栄圏」 をうたっていた日本人がこの戦争を反省するうえで必要なことなのだろう. 著者の分析は十分とはいえないが,結論は 「大日本帝国の誕生から崩壊まで,ほとんどの日本人は日本人による日本人だけの帝国という意識を捨てきれなかったのである」 ということだ. 多民族国家だった 「大日本帝国」 にふさわしい体制をつくれなかったことがおおきな敗因だといえるのではないだろうか.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「大日本帝国」崩壊@ [bk1]「大日本帝国」崩壊@Amazon.co.jp

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2009-11-23

著者は対象から昭和にかけて大連にくらし,日中戦争当時は内地でくらしていたものの,大連訪問時のようすも書いている. ときにはおもいをこめながらも,戦争や殺人事件などをふくむさまざまなエピソードを淡々と書いている. 大連のたべものやコンサートの話題もあって,興味をひかれる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 幻の大連@ [bk1]幻の大連@Amazon.co.jp

つづく…

2011-02-21

太平洋戦争末期には配給も激減してまともなものがたべられなくなったことは,以前からいわれているとおりだ. おもしろいのは戦時下でももっと余裕があったころだ. もともとゆたかではなかった一般国民の食卓に 「代用食」 なるものがはいってきて,むしろたべものの幅をひろげているようにもみえる. とはいえ,婦人雑誌のレシピは国民がほんとうにたべていたものとはちがうから,そこはくべつするべきなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 戦下のレシピ@ [bk1]戦下のレシピ@Amazon.co.jp

つづく…

2011-02-27

上海租界にはイギリス人,アメリカ人,ロシア人,ユダヤ人,日本人,そして中国人がいた. おもに,自由な雰囲気があった 1930 年代までの上海について,それぞれに 1 章ずつあたえて書いている. 内容はそれぞれの国民というよりは,彼らがもたらした文化に重点がある. 日本人についても,山田妙子というダンサーや,朝比奈隆,服部良一という音楽家,山口淑子という女優などがとりあげられているが,「文化建設という点においては欧米に遠く及ばない」 と認識されていたという.

現在の上海を観光してこういう時代にふれるのはむずかしいだろうが,この本を参考にして,ぜひ,こころみてみたいとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 上海@ [bk1]上海@Amazon.co.jp

つづく…

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