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メディア・アート・イベント・エンターテイメント アーカイブ

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tetu_bn_161.gif 書評・読書カテゴリーには私が Amazon や BK1 に投稿した書評や,本について書いた文章をあつめています. 以前はすべての書評をひとつのページにいれていましたが,書評の数がおおくなり,書評・読書カテゴリーのページがながくなりすぎたので,書評・読書カテゴリーを分割しました. 書評以外のカテゴリーにあわせて, Web とインターネット仕事と起業メディア・アート・イベント・エンターテイメントインタフェース,アメニティとデザイン思想・哲学・宗教情報学・計算・プログラミング政治・法律・憲法教養・教育と学習歴史環境生活知的生産とリテラシー社会・経済秘密・プライバシー保護とセキュリティ言語・コミュニケーションとネットワーキング というように書評を細分するようにして,書評カテゴリーのページにはそれらに分類しづらいものをあつめました. なお,このページは各カテゴリーのページの先頭に表示されるように,意図的に投稿日時を 0001-01-01 00:00:00 としてあります (実際の投稿日時は 2007-11-03 10:39 です).

2007-09-15

イベント屋ではなく情報通信屋の私にとって,この本の内容はすぐにやくだつというものではない. しかし,MR (Mixed Reality) とイベントとの比較,コミュニケーションとコラボレーションの問題など,情報通信技術との接点もいろいろ論じられている. また,“ハレ” の場だった子どものころの正月の話や,“計算” がなくエネルギーにみちていた大阪万博の話など,その後,現在までのあいだにうしなわれてしまったものをふりかえる機会をあたえてくれる. 著者自身がこれらのさまざまなかんがえ -- アイデア -- をもとにイベントに挑戦しているわけだが,これらのアイデアをイベントにせよ他の世界にせよ,いかしていくことができるか,読者にも挑戦がもとめられているのだとおもう.

評価: ★★★★★

関連リンク: コトづくりの眼@ [bk1]コトづくりの眼@Amazon.co.jp

つづく…

この本の著者のひとりである平野の本 「コトづくりの眼」 はイベントに関するさまざまなかんがえやアイデアの宝庫である. この本においても平野が主導権をにぎっているが,「コトづくりの眼」 ほどの密度はないので,まず 「コトづくりの眼」 を読むとよいだろう. それでも 「コトづくりの眼」 にはなかったかんがえがいくつか書いてあるし,(私にはあまり興味がないが) イベントの実務にかかわるヒントはこの本のほうがえられるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: イベントの底力@ [bk1]イベントの底力@Amazon.co.jp

つづく…

2007-09-16

この本の魅力的なタイトルにつられて買ってしまった. 私が知りたいのは今後 10 年あるいは数 10 年のスケールで放送・通信メディアがどう “進化” していくかということである. ところが,著者はギョーカイ通なので,ギャップフィラーという小型アンテナの話とか,民放の番組のスタイルとして NN, NL, LN, LL があるとか,こまかい話はいろいろ書いてあるが,全体がつかめる話はあまりない. アップルのアイチューン (iTune) もちょっと登場するが,単なるエピソードであり,それが “進化” とどうむすびついてくるのかについては書いてない. あまりに近視眼的なのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「新」メディア進化論@ [bk1]「新」メディア進化論@Amazon.co.jp

つづく…

著者は 「やらせ」 の問題と必死にとりくみ,10 年をかけて結論をだした. すなわち,現場で撮ったナマの映像だけでは明確なメッセージをつたえることはできない. 「伝えたいことがあれば,そのために考えられるありとあらゆる最善の方法を考える,というのが作り手の原点です. ただそれだけが,作り手の原点だと思い定めること. それしかないのではないか,というのが,私の現在です.」 10 年をかけたというが,まだ受け手を十分に説得できる論理はそこにはない.

しかし,もうすこし説得的にするためのヒントはあるのではないかとおもう. そもそもテレビは現実をすべてつたえることはできない. 現実の一部を画面にきりとってつたえることができるだけであり,その時点ですでに,著者がくりかえし書いている 「ありのままの事実」 をつたえることなど不可能である. 著者はこの点を指摘していない.

著者が指摘している重要な点のひとつは,取材することによって取材される側に影響をあたえてしまうこと,たとえばカメラでうつされたひとがいつのまにかカメラを意識して演技してしまうということである. 著者はまた,映像をただしくうけとるためには受け手がリテラシーを身につけている必要があるが,現在の日本ではそれがカリキュラムにとりいれられていない点を指摘している. 著者はほかにもさまざまな重要な指摘をしているが,惜しまれるのはそれが整理されていないため,おおくの読者にはみのがされてしまうだろうということである.

評価: ★★★★☆

関連リンク: テレビの嘘を見破る@ [bk1]テレビの嘘を見破る@Amazon.co.jp

つづく…

日本の歴史とくに大東亜戦争をみなおそうといううごきが,「新しい歴史教科書をつくる会」 をはじめとして,さかんになっています. みなおしを主張するひとたちが問題にする点のひとつは,「南京大虐殺」 をうつしたとされる写真のおおくが虚偽にみちたものだという点です. この戦争に関するおおくの本のなかでその真偽が議論されています. しかし私は,戦争とは直接の関係がない本のなかでこの問題に関連する記述があることを発見し,重要な論点を提供していると感じました. それは,今野 勉 の 「テレビの嘘を見破る」 という本です.

つづく…

2007-09-17

著者は,「デジタル・コンバージェンス」 つまり通信と放送の融合でもたらされる中心的なサービスはオンデマンド・テレビつまり VOD (Video On Demand) だという. 通信や放送によって現在でもリアルタイムの会話やイベントの共体験や,その他さまざまなことができる. 仮想現実 (virtual reality) の技術も発展してきている. それにもかかわらず,そういうこととは関係なく,「貸しビデオ屋から DVD を借りてきたり,YouTube でビデオを見たりするのと本質的にかわらないことしかできないのだとしたら,通信と放送の融合にどれだけの意味があるというのだろうか. 「衝撃」 どころか,退屈でしかたがない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: デジタル・コンバージェンスの衝撃@ [bk1]デジタル・コンバージェンスの衝撃@Amazon.co.jp

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著者はイベント演出家がどういう仕事をしているか,イベントを成功させるための条件はなにか,などを語っている. そしてなによりも,著者が一部を演出した 「2002 FIFA ワールドカップ」 と 「国民文化祭・ふくい 2005」 における波乱と感動にみちた経験を語っている. とくに,リハーサルでの失敗をのりこえて閉会式で舞わせた 27000 匹の折鶴の話がもっとも印象的である.

評価: ★★★★☆

関連リンク: イベント営業演出家@ [bk1]イベント営業演出家@Amazon.co.jp

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2007-09-24

視聴率ばかりを追って俗悪な番組ばかりつくっているといって民放はしばしば批判される. 著者はこのようなかんがえにまっこうから反論している. 視聴率をあげようとするのは会社の利益に貢献するというサラリーマンとしては当然の目的のためである. しかし,そのためには自分の好きな番組をつくるというひとりよがりな態度をすてて,ひろい年齢層の 「普通の人」 にうけいれられる番組づくりをすることが必要だという. 著者はこのやりかたが飲食,家電をはじめとする他の業界でも通用すると書いているが,実ははばひろい年齢層にうけいれられなければヒットしないというテレビの特殊性にもとづいているとかんがえられる. 通常のマーケティング理論では商品が対象とする顧客層を明確化して,いかにそこに特化するかが重要とされている. テレビはこのさきどうなるのか,また視聴率というものがどうなるのかはわからないが,そういう問題に対するひとつの視点をあたえてくれる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「視聴率男」の発想術@ [bk1]「視聴率男」の発想術@Amazon.co.jp

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2007-09-29

本書は YouTube がうまれたいきさつや背景について語っている. 240 ぺージほどの本のなかで YouTube そのものについて書いているのは 40 ページくらいでしかないが,なぜ 「燃える 3 人組」 が成功したかがえがかれている. そして,その背景にある 「ビデオ・ハイク (俳句)」 やテレビとの関係,著作権問題,そして果ては中国,BRICs,日本の将来まで,はばひろい話題がとりあげられている. でも,YouTube の話はそれだけですか?

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: YouTube はなぜ成功したのか@ [bk1]YouTube はなぜ成功したのか@Amazon.co.jp

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2007-10-13

ブログの本は多数あるが,文章のかきかたについての本はほとんどない. したがって,本書は希少なものだといえる. とはいっても,本書ではブログの文章を特別なものとかんがえているわけではなく,まずコラムとエッセイに分類し,エッセイのかきかたとして 「枕草子」,「方丈記」,「徒然草」 という 3 つのコースからえらぶことをすすめている. 非常に古典的な分類だといってよいだろう. しかし,文章法について書いているにしては文章構成について書いてないのが弱点である. 後半はブログの内容を出版することからはじまり,小説のかきかたまで書かれている.

全体をとおしてみると,中途半端だという印象がぬぐえない. エッセイはともかくコラムはどう書けばよいのかもよく書いてない. 著者は小説家なので小説へのおもいいれが書かれているが,ブログをもとにしてどうやって小説が書けるのかもわからない. 著者の文章とくに小説に関する古典的なかんがえかたとブログというあたらしいスタイルとのミスマッチを解くことができない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「書ける人」になるブログ文章教室@ [bk1]「書ける人」になるブログ文章教室@Amazon.co.jp

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2007-10-22

この本はひどく評判がわるい. 「ゲーム脳の恐怖」 というタイトルからして,拒否反応がでるのはもっともなことだとおもう. 実際,著者はもともと 「ゲームは脳にわるい」 という仮説 (あるいはおもいこみ) をもっていて,それを証明するために実験をかさねてきたのだとおもわれる. しかし,論理に不完全な点があったり,おもいこみにもとづいて書かれた部分があるのはこの本にかぎったことではない. この本を冷静に読めば,著者がそんなにバランスを欠いた主張をしているわけではないことがわかる. ゲームをするときはからだの非常にかぎられた部分しかつかわない. そうした状態をつづけるのでなく,お手玉などのようにもっとからだ全体をつかうあそびをしたほうがよいという主張はもっともなものだとおもう. 冷静に読めば,えるところのある本だとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ゲーム脳の恐怖@ [bk1]ゲーム脳の恐怖@Amazon.co.jp

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2007-10-29

この小説のでだしでは,つよく非日常性をもとめる涼宮ハルヒと退屈な日常とのコントラストがうまく発展していくことを期待した. しかし,その後あまりに急速に非日常性が拡大していきながら,キョンや朝比奈はあいかわらず “ふつう” にえがかれていることに,私はついていけなくなった. 日常性と非日常性との関係がもうすこし,ていねいにえがかれていれば,私にとってももっと迫力があったとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 涼宮ハルヒの憂鬱@ [bk1]涼宮ハルヒの憂鬱@Amazon.co.jp

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2007-11-21

本書のタイトルからは日常の食卓の問題点を指摘した本のようにみえたが,実際はクリスマスと正月の祝いかたや料理についてのアンケートをもとにした分析が大半をしめている. つまり,むしろハレの食卓についての本である.

最近の日本では正月はしだいにハレの座からひきずりおろされ,かわってクリスマスにハレのやくわりがあたえられている. このハレの場をもりあげるために,中学生・高校生にまでもサンタクロースのプレゼントがおくられる. とはいっても,ハレの場をつくるのに家族が共同作業をするわけではなくて,それぞれバラバラに自分のやりたいことをやり,たべたいものをたべる.

アンケートにこたえた主婦のおおくは,おせち料理など日本の伝統を継承していくべきだし自分もそうしたいと書きながら,それとはまったく反する行動をしているという. 著者はそこにするどい危機感を感じている. これだけの情報から結果をどう解釈したらよいのか私にはよくわからないが,現代の家庭・食卓への警鐘として,読むべき本だとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 普通の家族がいちばん怖い@ [bk1]普通の家族がいちばん怖い@Amazon.co.jp

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2007-11-24

本書は序奏とコーダとして対話があり,そのあいだに金によるベートーベンの 9 個の交響曲についての解説 (変奏曲?) がある構成になっている. 他の作曲家の交響曲とくらべて非常に特徴的なのは,1 曲 1 曲のすべてが完全に独立していて,構造や作風やつたえようとしたメッセージもすべてちがうと書いている. また,交響曲第 5 番が古典派としての頂点としての完璧な作品であり,同時に作曲された第 6 番がロマン派への入口だという. ここまではだいたい私自身がかんがえていたことと一致している. やや意外だったのは,交響曲のなかにあるダサいところや,よわいところが指摘されている点である. 演奏するときに,なるべくはやくとおりすぎたい部分もあるという. いろいろとおもしろい本である.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ベートーヴェンの交響曲@ [bk1]ベートーヴェンの交響曲@Amazon.co.jp

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2007-11-25

著者は産業デザインを批判し,ポストモダンを否定するようなことばを書いている. そして,この本のなかにあらわれるデザインたちは,iPod などよりはるかに以前のものから,白を中心とするモノトーンな世界である. この本じたいが,デザインの本にありがちなカラーページのおおいものではなく,白と黒だけのデザインである. それは,著者が担当している無印良品の思想にもつながっている.

著者はつぎのように書いている. 「僕の専門領域はコミュニケーションであるが,その理想は力強いヴィジュアルで人々の目を奪うことではなく,五感にしみ込むように浸透していくことであると考えるようになった.」 このことばの後半は納得のいくものだが,私にとってはこの本に何回か出現する 「コミュニケーション」 ということばが,まだひっかかったままである.

評価: ★★★★☆

関連リンク: デザインのデザイン@ [bk1]デザインのデザイン@Amazon.co.jp

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2008-02-10

風景写真も人物写真もあり,20 世紀のさまざまなできごとを感じさせるものもあるが,戦争など,あまり刺激的な写真はふくまれていない. ヌード写真もあり,Amazon.co.jp では版によってアダルト指定をうけているが,本来は指定されるべき本ではないとかんがえられる. 大半はモノクロ写真だが,わずかにカラー写真がふくまれている.

ダリがしばしば登場していることからもわかるように,20 世紀の心理描写や個人の生活を中心とした写真集ということができるだろう. 20 世紀にはもちろんもっとほかの面もあるが,760 ページもある写真集とはいえ,1 冊ですべてをあつかうことはできないということなのだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 20th Century Photography@Amazon.com20th Century Photography@Amazon.co.jp

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2008-04-12

これは,「通信と放送の融合」 に関する本というよりは,コンテンツ政策に関する本である. 日本特有のポップカルチャーがうみだすコンテンツに目をむけ,それをいかすコンテンツ政策を提言している. 通信と放送との区分は日本特有の法制からくるものである. イギリスのコンテンツ配信事業者からは 「伝送方式で制度の適用が異なり,著作権処理の扱いも異なる,という日本の事情が一笑に付された」 (p. 192) という. つまり,「通信と放送の融合」 というのは技術的な課題ではなくて,こういう法制をあるべきすがたになおしていくことだということだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「通信と放送の融合」のこれから@ [bk1]「通信と放送の融合」のこれから@Amazon.co.jp

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2008-04-28

汐留,丸ノ内,六本木ヒルズ,代官山,町田,おまけに北京といったまちを著者 2 人が実際にあるきながら会話した内容を中心として,それに 2 人が文章を足して構成している. 文章だけでも 200 ページをこえるボリュームがあり,新書にするには写真を十分にいれるスペースがとれなかったのだとおもうが,会話の文章から情景を想像するのはむずかしい. だからますます,あまりいったことのない場所にはいきたくなる.

丸ノ内や六本木ヒルズは目にうかぶが,東京に住んでいながら汐留や代官山にはほとんどいっていない. うしなわれた同潤会アパートはもはやサンプルしかのこっていないが,ヒルサイドテラスにはまだみるべきものがあるらしい. 汐留も反面教師としてみておく価値があるのだろう. 今度,時間をつくって,いってみようとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 新・都市論TOKYO@ [bk1]新・都市論TOKYO@Amazon.co.jp

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2008-05-04

「放送と通信の融合」 に関する本は何 10 冊かあるが,本書はそのなかでももっとも示唆にとんでいる. テレビの進化をかんがえるうえでコンテンツをどのように発展させていくかをかんがえることが重要なのはいうまでもない. しかし,著者はテレビ局や従来の放送・通信政策におさえつけられていた古典的な意味でのコンテンツ制作者を自由にすることを主張してはいない. むしろ,「次のテレビ」 や 「テレビの次」 として,YouTube やニコニコ動画がしめしているような Web 2.0 的な方向をみている. 「テレビの次」 のビジネスモデルのヒントを Google や楽天にみている. とはいっても,よみおわると,むしろいろいろともやもやした感じがわきあがってくる. むしろ,そのもやもやをそだてていくことが今後のたのしみだとおもえる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: テレビ進化論@ [bk1]テレビ進化論@Amazon.co.jp

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2008-05-30

有名な建築家や大規模な建築だけでなく,著者が見学した個人住宅なども多数とりあげられている. 個々の建築を静的にとりあげるだけでなく,首都高などをはしるクルマからみるところは斬新であり,「パースペクティブ」 というタイトルにふさわしい.

写真は全般に暗くてみづらい. モノクロだからということもあるが,もうすこしくふうの余地があるとおもう. また,本文の意図をうまくつたえられていないものもある.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 現代建築のパースペクティブ@ [bk1]現代建築のパースペクティブ@Amazon.co.jp

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2008-05-31

著者はさまざまな 「まちづくり」 の活動を調査して,それらのなまのすがたをつたえるとともに,そこから今後のまちづくりへの展望をみちびこうとしている. 終章では 「上からの改革」 がもはや機能しないことやボランティアの重要性についてのべていて,それはそのとおりだとおもうが,この結論はまったく不満足なものである. この程度のことなら,たとえば NHK の 「ご近所の底力」 などでも,いつも話題にされていることである [もっとも,本書の出版の時点ではこの番組ははじまっていなかったのだろうが].

本書で紹介された 「まちづくり」 の例のなかにはもっと,くみとるべきものがあるようにおもう. たとえば十勝の 「北の屋台」 については 「改行準備として 2000 年 2 月に 「北の起業広場協同組合」 を設立し,ホームページを開設. 市内の各所で世界の屋台の写真パネルの展示会を開催し,新聞社をはじめとして各種のメディアの協力も得て広報活動を行った.…」 といった記述があるが,ここからくみとれるものはすくなくないとおもう. それをくみとる作業をすべて読者にまかせてしまうのでは,著者,研究者としての仕事を放棄してしまっているといわざるをえないのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 〈地域人〉とまちづくり@ [bk1]〈地域人〉とまちづくり@Amazon.co.jp

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2008-06-02

第 1 章で脱構築を脱建築とみなすという説を提示し,それを建築の危機ととらえている. 第 2 章ではシェルターとしての建築という見方をほとんどきりすててしまう. こうしう大胆な見方で読者をひきこみ,ヨーロッパの建築史をみていく. しかし,大胆さは荒削りな議論の表裏であり,最後にふたたび語られる脱構築による建築の危機が説得力をもってこない. 著者は建築が物質的な構築にこだわりつづけたことが批判されてたと書いているが,建築がシェルターであるということをおもいだせば,物質的であるのは当然のことだとおもわれる. おどろおどろしい議論のわりには,のこるものがすくない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 新・建築入門@ [bk1]新・建築入門@Amazon.co.jp

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2008-06-03

建築や景観はカラー写真をみないとわかりにくいが,冒頭に 4 ページにわたってそれがあるのは,新書としては気がきいている. 本をよみすすむまで,そのかぎられた写真のなかに北朝鮮のピョンヤンの写真が数枚ある意味がわからなかった.

いろいろな話題がとりあげられているが,そのなかでも著者が力説しているのは日本橋をふさいでいる首都高を地下に移設するカネがあるなら,もっと有益なことがたくさんできるということである. この首都高移設に代表される 「景観論」 の極致として,整然としていて美しいピョンヤンの景観があるという. 著者が最後に書いているのは,こういう 「景観論」 のいきつく果ては 「何ごとも起こらない,変化なき永遠の定常状態.それは歴史の終わりかもしれない」 ということばである.

逆説的な書き方だが,著者が生き生きとした都市をもとめていることがつたわってくる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 美しい都市・醜い都市@ [bk1]美しい都市・醜い都市@Amazon.co.jp

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2008-06-07

建築に関するさまざまな対立的なモデルが紹介されている. ロバート・ヴェンチューリ の 「あひる」 と 「装飾された部屋」,青木 淳 の 「原っぱ」 と 「遊園地」,モデルとはいえないが 「斜線」 と 「スロープ」,クロード・レヴィ゠ストロース の 「近代的な科学者」 と 「器用人 (ブリコラージュのひと)」 ,エリック・レイモンド の 「伽藍」 と 「バザール」,男性原理と女性原理,白井 晟一 の 「弥生的なもの」 と 「縄文的なもの」,ブルーノ・タウト の 「伊勢・桂」 と 「日光東照宮」 あるいは 「天皇的」 と 「将軍的」,伊藤 忠太 と 岸田 日出刀 の 「神社」 と 「仏教」,丹下 健三 などにおける 「大衆的」 と 「貴族的」 等々. 本のなかばまでひろいあげてきたが,書ききれないほどである.

著者はこうしたさまざまな対立概念をたてて建築を分節していく. とても,めざましい. しかし,あまりに密度がたかすぎて,軽いきもちで新書をよみはじめた読者にはなかなかついていけず,散漫な印象をあたえてしまうともいえるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 現代建築に関する16章@ [bk1]現代建築に関する16章@Amazon.co.jp

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著者が破壊された景観としてまずヤリ玉にあげるのは国道 16 号によって代表される郊外の道路景観である. 行政による失敗例として神戸の震災復興,(ある程度の) 成功例として真鶴町の 「美の条例」 がとりあげられている. また,電線地中化にもひとつの章があてられている.

著者がもとめている,空中電線や派手な看板がない規制されて整然としたまちなみを批判するひともすくなくない. 一歩ゆずって景観の整備が必要であるとしても,もともとめだった建築がほとんどなかった国道 16 号のような地域においては景観は 「まもるべき」 ものではなくて,創造するべきものだろう. そこで著者がもとめるヨーロッパ的な景観がモデルになるとはかぎらない. 「失われた景観」 は 「失われた」 のではなくて,日本にはもともとなかったし,いまもいくつかの例外をのぞいて基本的にはないのだとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 失われた景観@ [bk1]失われた景観@Amazon.co.jp

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BCCKS」 という Web サイトがあります. ここでは「本がかんたんにつくれる」ということですが,すでに多数のオンラインの 「本」 があります. そのなかに 「清野とおる 未収録漫画」 というのがあります. 雑誌に発表するつもりで書きながら未収録におわった作品をのせたものですが,これをみると,紙メディアのために書いた作品を,うまく Web の紙とのちがいをいかしてプレゼンしていて,感心しました.

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2008-06-12

著者は欧米だけでなく,世界各地を旅するなかからえた,まちの景観に関するかんがえをのべている. また,横浜などで景観の保存のために,すでにきまっていた都市計画を変更させたことを回想している. 著者が強調するのは,景観は市民の協働によってデザインしていくべきものだという点である. ちいさな白黒写真ではあるが,アフリカや中近東をふくむ世界各地のすぐれた景観の写真は印象的であり,そこには景観に関してなにか普遍的なものがあるように感じられる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: まちづくりと景観@ [bk1]まちづくりと景観@Amazon.co.jp

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2008-06-13

Wikipedia の 「景観」 の項に,景観は客観的であり風景は主観的だということが書かれていることについては 「「景観」 ということばのイメージ」 という項目で書きました. ところが,これとは反対にちかいことを 田村 明 が書いていることがわかりました.

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2008-06-14

著者は 1997 年のこの本につづいて 2005 年に 「まちづくりと景観」 という本を書いていて,基本的な主張はかわっていない. 市民の協働によって景観をデザインするアーバンデザインを推進している. 本書ではまず 「景観」 と 「風景」 ということばを比較して,「景観」 を 「地域をトータルに捉えた認識像」 と定義し,トータルデザインとしてのアーバンデザインのあるべき姿や手法,実践例などについて書いている. 著者が中心となった横浜での成功例をはじめとして例は多数とりあげられているが,抽象論が中心の記述という印象をうける.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 美しい都市景観をつくるアーバンデザイン@ [bk1]美しい都市景観をつくるアーバンデザイン@Amazon.co.jp

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2008-06-17

著者は,ヨーロッパ諸国にはのこされている 「周囲の自然と渾然一体となった,地方の小さな町や村のたたずまい」 が現代の日本ではうしなわれてしまっているという. ではヨーロッパではそういう景観がずっとうけつがれてきたのかというと,著者がみてきたドイツにおいては,開発によっていったんうしなわれた自然景観が住民や地方政府の努力によって復元されてきたことが,この本にえがかれている. ドイツのほうが景観の復元のために有利な条件があったのだとしても,日本においてもそれができるはずだということをこの本はおしえているといえるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ドイツの景観都市@Amazon.co.jp

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2008-06-19

東京近辺の 「建築散歩」 の本は何冊かあるが,この本は建築だけでなく,そのなかにある家具にかなりのウェイトがおかれている点が他とはちがう. 写真や絵の数はおおいが,本文中にあるのは白黒であり,ちいさくて見づらい. 自分でいってみるためのガイドブックなので,コンパクトであることを重視しているということであり,やむをえないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 建築散歩24コース@ [bk1]建築散歩24コース@Amazon.co.jp

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2008-06-24

中国のわかい写真家を中心として,80 人ほどの作品を紹介している. Amazon.com で 4.5★ の評価をうけていたので,現代中国のエネルギーが感じられる作品を期待して買ったが,期待はずれだった. 写真など,あたらしい作風のものはまだ熟していないと感じられる. それに対して中国の伝統をいかした Gu Wenda の書にはみるべきものがある. ほかに Song Kun によるすこし空虚な情感をとらえた絵画 (水彩?),Wang Qingsong の,多数の人間をつかった彫刻のような写真 (?) には,すこし興味をひかれた. これから何 10 年かさきには,きっとおもしろいことになるだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: China Art Book@Amazon.co.jp

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2008-06-27

江戸時代末期以降の日本の洋風建築の歴史を 2 巻にわけて解説している. 上巻では外国人建築家によってもたらされた洋風建築が日本人によって模倣され,最初の日本人建築家たちが登場するところまでをえがいている. もっとも興味をひかれるのは,よくわからないまま西洋建築をまねて日本人の棟梁がたてた奇妙な擬洋風建築を,著者が 「建築探偵」 的あるいは 「路上観察学」 的な視点で観察し写真を紹介しているところである. 龍など,西洋にない装飾をつけたギリシャ風の柱,構造物からただのかざりになってしまったアーチなどが紹介されている.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本の近代建築 上@ [bk1]日本の近代建築 上@Amazon.co.jp

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江戸時代末期以降の日本の洋風建築の歴史を 2 巻にわけて解説している. 下巻では明治の建築家たちが成熟し,さまざまな流派にわかれて伝統的な様式でさまざまな建築をたてていくところからはじまるが,地震とのたたかいがひとつの焦点である. 関東大震災の復興の際などにつくられ,最近しばしばツアーがくまれている同潤会アパートや復興小学校などがとりあげられている. また,短期間にアールヌーボーやさまざまなモダニズム (表現派,ライト派,バウハウス派,コルビュジェ派など) のなかをはしりぬけていくさまがえがかれている.ナチスの影響なども分析されている. 興味をひかれる点がおおい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本の近代建築 下@ [bk1]日本の近代建築 下@Amazon.co.jp

つづく…

2008-07-09

日本の建物は靴をぬいで内部にはいるというところから,西欧の建築や街並みとのおおきなちがいが生じていると著者はいう. また,日本の建築が柱でささえられるのに対して西欧の建築が壁でささえられてきたことも対比している. 靴をぬぐ習慣はいまもかわっていないが,日本の住宅もツーバイフォーのように壁でささえて厚い断熱材や二重窓などで外部から遮断するようになってきている. それをかんがえると,はたしてこのちがいが今後もうけつがれていくのかどうかは疑問におもえてくる.

著者はまた,ル・コルビュジエのような近代建築家が設計した都市は建築間の距離がとおいため徒歩には適さないことを指摘している. その例として,くるまをもたないひとがおおいインドのチャンディガールをあげている. 著者はコルビュジエが現場にいくことをあまりこのまなかったことを指摘しているが,そのために人々の生活にあわない都市空間がつくられたのだろう. それでいて 「今から数百年たった将来,もし今日の建築が存在するとしたら,おそらくコルビュジエの建築だけだろう」 とも書いているが,現場をみずに設計した建築が将来は生活にあうようになるとはかんがえられないから,なぜコルビュジエの建築がのこるのか,わからない.

いろいろ疑問の点はあるが,著者の指摘に興味はつきない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 街並みの美学@ [bk1]街並みの美学@Amazon.co.jp

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著者の主張の基本線は正編とかわっていない. 西欧の建築が壁の建築であるのに対して日本の建築は床の建築であるという. 日本の建築が龍安寺石庭のように 「内から眺める景観」 をつくっているのに対して西欧の建築は 「外から眺める景観」 をつくっているという. 日本人がこれまでは外から眺める景観に無頓着だったために街並みの美しさがなおざりにされてきたが,いまこそそれをもとめるべきときだという. 本書には,前著にはなかった水辺の美しさやエッフェル塔と東京タワーなど,さまざまな景観が分析されている.

前著ほどの新鮮さはないが,あわせて読むことでさらに理解をふかめることができるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 続・街並みの美学@ [bk1]続・街並みの美学@Amazon.co.jp

つづく…

Artnet.com というサイトで Marina Abramovic という女性写真家の作品が紹介されている. 自分の裸体を被写体とした作品がおおいようである. このサイトと “Out of the Red” (Damiani) という本には Chen Lingyang という女性写真家の作品が紹介されている. こちらは月経時の女性の性器が被写体とされている. だれのものかはもちろん書いてないが,このような状態がうつせるのは作家本人のものだからだろう. 男性でも自分のからだをうつすことはもちろんできるが,その意味はおおきくちがってくるようにおもえる.

つづく…

2008-07-10

アメリカでは近年,ウォルマートをはじめとする大型店が規制され,進出に反対してくいとめた例がおおいという. 日本では逆に自治体が大型店を誘致した結果,中心市街地がさびれて地価が低下し自治体の収入が減少する事態が多発している. 本書はアメリカの例を紹介して日本における規制や反対運動の参考になるようにしている.

しかし,本書ではの大型店のデメリットばかりを書いている. そこにはメリットもあるはずであり,両方をあわせてかんがえることで,より客観的な判断ができるものとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 大型店とまちづくり@ [bk1]大型店とまちづくり@Amazon.co.jp

つづく…

2008-07-28

Misty Keasler の写真集 “Love Hotels” (Chronicle Books) は,外国人には (ラブホテルをしらない日本人にも) とても奇異なラブホテルのへやなどの写真をあつめている. ほとんどの写真は大阪のラブホテルのものであり,ほかのおおくも関西である. 東京のものはひとつだけである. たまたま Keasler が大阪を中心に調査したからそうなったのか,この種のデザインが大阪中心なのか,ちょっと興味をひかれる.

つづく…

2008-07-30

100 枚以上のラブホテルの室内の写真をならべた写真集である. この本の最初の版は 2001 年に出版されているが,その後,アメリカでは Misty Keasler の写真集 “Love Hotels” (Chronicle Books) が出版されている. 大阪中心にラブホテルの写真をあつめている点では共通しているが,いくつかちがいもある.

Keasler の写真からはテレビや灰皿のようなフツーのものが排除されているのに対して,都築はテレビを積極的に写真にいれている. その結果,Keasler の写真にくらべると都築の写真のほうに日常性が感じられる. 対象となっているラブホテルも都築のほうがおとなしいところがおおいようである.

Keasler のほうがインパクトはあるようにおもうが,都築のほうが日常と非日常が交錯する,よりラブホテルらしい空間をえがいているといえるのかもしれない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ラブホテル@ [bk1]ラブホテル@Amazon.co.jp

つづく…

2008-07-31

ラブホテルを卒論のテーマにえらんでしまった女子大生が,指導教官のすすめもあって博士課程でまでラブホテルの研究をすることになった.この本がその集大成というわけである.研究なので地の文は基本的にまじめである.ラブホテルやその経営者に取材した情報が中心である.しかし 1970 年代にはやった回転ベッドなどの派手なしかけはいまはなく,当時の週刊誌・月刊誌からの引用にたよっている.それに影響されている部分は地の文もおもしろい.

ラブホテルは衰退しつつあるというが,女子大生が研究テーマにとりあげるのも秋葉原文化にちかいところがあるからではないのだろうか.写真集も日本でもアメリカでも出版されている.この本でも欧米のわかい旅行者がこのんでラブホテルにとまっていることが紹介されている.チャンスはあるのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ラブホテル進化論@ [bk1]ラブホテル進化論@Amazon.co.jp

つづく…

2008-08-12

通常の新書の約 2 倍のページをつかって,おもに古代ギリシャからからバロックまでの都市計画を説明している. それ以降から現代の都市計画を日本の例もあげて説明しているが,ちょっとバランスがわるい. 世界史なので日本があまりとりあげられないのはやむをえないかもしれないが,もっと近代・現代にページをさいたほうが読者の興味をひいたのではないかとおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 都市計画の世界史@ [bk1]都市計画の世界史@Amazon.co.jp

つづく…

2008-08-26

私もケータイ小説を読んでいないひとりだが,そういうひとはケータイ小説ときくと十把ひとからげにとらえがちだ. しかし,この本を読めば,そのなかにも,ひとりの作者が計算づくで書いた Deep Love のような作品もあり,「ライブ」 つまり読者の反応をうけながら書かれていくものもあることがわかる. とはいえ,文体はいささか,かたいし,あまりまとまりがよいともいえない. もうすこし,いろいろ情報をあたえてくれることもできたのではないかと惜しまれる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ケータイ小説活字革命論@ [bk1]ケータイ小説活字革命論@Amazon.co.jp

つづく…

2008-11-12

著者によれば,日本は源氏物語の時代から,おおくの芸術や芸能をうみだしてきた. しかし,現代日本においては 「今なお 80 年代の好景気から生まれた 「モノづくり」 に対する神話が残り続けている」,「人々はバブル時代のモノづくり神話を信じ続け,経済大国のノスタルジーに浸っている」 という. ソニーのトップだった出井氏もそうだという. その神話をすてて,日本は 「涼宮ハルヒ」 で代表されるクールなコンテンツをのばすべきだと主張している.

だが,日本のモノづくりはむしろバブル時代におろそかにされていたのであり,それ以前につちかわれてきたはずである. また,ソニーは CBS やコロンビア映画を買収してコンテンツ・ビジネスをおこなってきた会社である. ジャパン・クールのコンテンツをいかすべきだという主張には賛成だが,モノづくりとくみあわせてこそ,つよみをいかせるのではないだろうか.

著者がソニーと対比するアップルは,たしかにコンテンツ中心に収益をあげているのだろうが,iPod にせよ iPhone にせよ,モノづくりによってもたらされるユーザ・エクスペリアンスを重視している会社である.その点で著者の認識は根本的にまちがっているとおもう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ジャパンクールと情報革命@ [bk1]ジャパンクールと情報革命@Amazon.co.jp

つづく…

2009-03-19

現代アートもバブルがはじけたところだが,この本はそれがはじける直前に書かれている. しかしこの本のねらいはバブルについて書くことではなくて,現代アートの価値がわかるひとびとのこと,それがけっしてわかりにくいものではないことなどをえがいている. もちろん現代アートを写真で紹介しているが,カラー・ページがないのは残念だ. もうすこし価格をあげてもカラーで紹介したほうがよかったのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 現代アートバブル@ [bk1]現代アートバブル@Amazon.co.jp

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2009-03-29

新書 1 冊で中世から現代までの西洋音楽史を論じているが,中心は古典派からロマン派の音楽にある. それは,音楽が特定の作曲家の作品として演奏され,おおくのひとに消費された時代の音楽ということだ. 現在でも古典派やロマン派の作品が演奏されつづけているが,もはや特定の作曲家がそれほど有名になることはなくなっている.

これまで,音楽史というのはとおい過去から未来へとずっとつづいていくものだとかんがえてきた. しかし,著者がえがく西洋音楽史は中世にほそぼそとはじまり,古典派,ロマン派の時代にはおおきなながれになったが,もしかすると現代にはきえようとしているながれである. こういうながれをえがくには,新書というメディアが適切だったのかもしれない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 西洋音楽史@ [bk1]西洋音楽史@Amazon.co.jp

つづく…

2009-04-05

加藤周一には 「私にとっての20世紀」 という著書もあり社会主義や戦争を中心に議論されているが,「20世紀の自画像」 では戦争はとりあげられているが社会主義はおおきなテーマにはならず,かわりに文学中心の 「戦後思想」 がとりあげられている. プロローグでは科学技術もとりあげられているが,本文ではテーマとなっていない.

本文第 1 部は成田龍一によるインタビュー,第 2 部は成田による解説となっているが,いずれもいくつもの話題のあいだで焦点をうつしながら論じているため,あまり迫力が感じられない. 著者は加藤ひとりということになっているが,議論のながれをつくっているのは成田である. 加藤自身の著書を読むほうがよいとおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 20世紀の自画像@ [bk1]20世紀の自画像@Amazon.co.jp

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2009-06-02

この本は 「ビエンナーレ」 にかぎらず国際美術展をあつかっている. 日本でひらかれた 「横浜トリエンナーレ」,「越後妻有トリエンナーレ」,「北九州国際ビエンナーレ」 のほか,ブリスベンでひらかれた 「アジア太平洋トリエンナーレ」 などもとりあげられている.

6 人の著者が 1 章ずつ書いているので視点もさまざまだが,従来の美術展のわくをやぶっている部分に注目している点は共通しているのだろう. 「横浜トリエンナーレ」 が従来の美術批評ではうまくあつかえず,市民参加がもとめられているという指摘,ディレクターとなった 川俣 正 が 「横浜トリエンナーレ 2005」 を前回 (2001) とはまったくちがうものにしたこと,「アジア太平洋トリエンナーレ」 でこどもを対象にしたキッズ APT のこころみなど,さまざまなあたらしいこころみがとりあげられている.

「横浜トリエンナーレ」 を見に行くほう (私) もいろいろ,こころみをしているが,(この本の出版後の) 2009 年には家族をつれていくのに失敗する (不同意だった) など,かならずしもうまくいっていない. 開催者もいろいろこころみるなかで,失敗するものもあれば成功する部分もある.それが 「国際美術展」 というものなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ビエンナーレの現在@ [bk1]ビエンナーレの現在@Amazon.co.jp

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2009-06-28

20 世紀音楽は作曲や演奏という行為の否定にまでつながったが,おおくの 「作品」 は一般人には縁のないものだった. この本はそういう音楽を作曲家の 「作品」 として,つまり 19 世紀的な見方で紹介している. ヴァーグナーにはじまり,ドゥビュッシー,シェーンベルクなどを経て,20 世紀末までのさまざまな作曲家と作品が 400 ページ以上にわたって,とりあげられる.

こういう古典的な論じ方になった理由のひとつは,作曲や演奏の否定が成功しなかったことにあるのかもしれない. この本をみて,CD やネットからそれらの作品をひろいあげてきくのも,わるくないだろう. しかし,岡田暁生の 「西洋音楽史」 に書かれているように作曲家の時代がとうにおわってしまっている現代においては,いわゆる 「現代音楽」 以前の部分をのぞけば,この本は一般人には無縁の過去の遺物をならべているだけだとおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 20世紀音楽@ [bk1]20世紀音楽@Amazon.co.jp

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2009-07-14

コンピュータ・プログラムをつかって建築設計をするためのさまざまな技法や設計例について書いている. 「アルゴリズミック」 というと完全に自動的に設計するようにきこえるが,おおくの例では設計の候補を出力して,設計者がそのなかから選択する方法がとられている. その点ではアルゴリズミック・コンポジションつまりコンピュータをつかった作曲と同様であり,まさにクセナキスがとっていた 「音楽デザイン」 の方法とおなじである. それを 「アルゴリズミック」 とよぶのが適切であるかどうかはわからない.

紹介されている各種の 「技法」 はまだ建築設計に適用できるようになっていない (あるいは適用の方法までは書いてない) ものがおおく,その点では不十分である. さらに数年たてば,もっと充実した内容の本が書けるのかもしれないが,現状でも十分におもしろく,建築家でなくてもたのしめる本である.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アルゴリズミック・デザイン@ [bk1]アルゴリズミック・デザイン@Amazon.co.jp

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2009-09-04

出版年をよくみずに古書を買ってしまった. 2005 年に出版されているのだが,YouTube が登場したばかりのときだ. YouTube やニコニコ動画はは無償だあって 「コンテンツ・ビジネス」 ではない. それらをのぞけば状況は当時とそれほどかわっていないかもしれない. しかし,すくなくとも iPod はあったはずだし,ある程度はあつかわれているが,それも考慮していない部分もある. いまからみる価値はほとんどないだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 変貌するコンテンツ・ビジネス@ [bk1]変貌するコンテンツ・ビジネス@Amazon.co.jp

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2009-10-05

さまざまな Web メディアにかかわってきた著者が,Web メディアを中心として新聞・雑誌という既存のメディアまで,さまざまな点を論じている. さまざまな Web サイトがとりあげられているが,それらを知らない読者が本書をよりよく理解するには,それらをみずから体験する必要があるだろう. だから,本書はじっくり読む必要があるし,そうすればいろいろなたのしみがあるのだろう.残念ながら私はまだそれだけの時間がとれていない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 新世紀メディア論@ [bk1]新世紀メディア論@Amazon.co.jp

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2009-12-30

著者は 「エッセイスト」 と紹介されているが,これはエッセイというよりは随筆だ. 散歩して見たもの聞いたものを思ったまま書いている. 著者の専攻はドイツ文学ということだが,ここにはドイツ文学の話は登場しない. それでも本や日本文学の話になると著者の知識がいきてくる. その一方で政治や経済の話になるといささか首をかしげたくなる. もうすこしテーマをえらんだほうがよかったのではないかとおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 東京ひとり散歩@ [bk1]東京ひとり散歩@Amazon.co.jp

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2010-05-29

著者はコンピュータ科学の成果を利用してさまざまなアート作品を創作してきた. コンピュータをつかったアートは他の作家によってもさかんにつくられるようになっているが,AI (人工知能) にもふかくかかわる著者のこころみはよりひろく,ふかい.

しかし,AI じたいがまだ多様な側面をもった人間というものを十分にとらえているとはいえない. そういうなかでは,著者のそれぞれのこころみも一面的だという感じがぬぐえない. すぐれた芸術作品には多面性・多層性がある. 「カルチュラル・コンピューティング」 には従来のアートにはなかった人間とのインタラクションがある,とはいうものの,ふかみのある芸術に到達できるのはいつの日か,あるいはそもそも可能なのか? とおもってしまう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: カルチュラル・コンピューティング@ [bk1] カルチュラル・コンピューティング@Amazon.co.jp

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2010-06-12

テレビ局の裏側にはさまざまな話題があるはずだが,この本の焦点はおもにテレビ局の正社員とそのまわりにいるひとびととの格差にあてられている. 正社員はろくな仕事をしなくても他の業界よりはるかにたかい給料をもらっているが,そのまわりにいる多数の零細企業のひとはその数分の一しかもらっていない.

有名タレントを起用すると制作費の半分をギャラとしてもっていかれるような環境では,この格差はそれほどめだたないということなのかもしれない. テレビ局の裏側のごく一部だとはおもうが,この本でそれをかいまみることができる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: テレビ局の裏側@ [bk1] テレビ局の裏側@Amazon.co.jp

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2010-06-14

演奏者という立場から,さまざまな 20 世紀音楽の魅力をかたっている. 副題に 「現代音楽」 とあり,シュトックハウゼン,ハルトマン,ケージなどの作曲家をあつかっているが,マーラー,ドビュッシー,ストラビンスキーなどにもページをさいている. 19 世紀の作曲家についてはほとんどふれていないが,著者がロマン派と現代の作曲家をわけへだてなく理解し演奏していることがつたわってくる.

帯には 「「現代音楽」 入門」 とあるが,この本を読むと聴衆の立場で現代音楽を理解するのにどれだけやくにたつかはわからない. 理解するにはむしろ先入観なく聴くのがよいようにおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 新しい音を恐れるな@ [bk1] 新しい音を恐れるな@Amazon.co.jp

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2010-06-15

東京などでは街中にあふれるようになってきたデジタルサイネージについて,実際にそれを展開している企業の短文もまじえて紹介している. あふれるようになったとはいえ,まだ視聴率のような効果の測定法が確立されていないという. そのためか,また不況のためもあり,コストダウンがもとめられている. 紙にくらべるとコストがたかいが,ポスターなどの紙より人気があったり効果がたかかったりするわけでもない. テレビ CM の効果がうすれるなかで,それにかわる手段として模索されているが,まだキメ手を欠いているといったところだろう. くるしさがにじみでている.

評価: ★★★★☆

関連リンク: デジタルサイネージ戦略@ [bk1] デジタルサイネージ戦略@Amazon.co.jp

つづく…

2010-07-01

タイトルのとおり,iPad とキンドル (Kindle) がおもな話題だが,それらだけにとどまらず,ソニーの eBook やボイジャー・ジャパンの T-Time などもとりあげられている. eBook に関してどういう歴史があったのか,それらと iPad やキンドルはどうちがうのか,キンドルのビジネスモデルはどうなっているのか. そういうエピソードがおりこまれ,さまざまな知識をえることができる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: iPad vs. キンドル@ [bk1] iPad vs. キンドル@Amazon.co.jp

つづく…

2010-08-08

最近,21 世紀の日本が世界にウリにするのはコンテンツであり,そのひとつの中心はマンガやアニメだという声がおおきくなっている. この本はそういう議論の異常さをもう一度おもいおこさせてくれる. サブカルチャーだったはずのマンガやアニメが国策にされてしまっている. 第 2 部はそれに対する批判だ.

それとともに,第 1 部では日本のマンガやアニメが日本オリジナルではないことが強調される. それとともに,それらが太平洋戦争におおきな影響をうけて独自性をえたことも論じられている. オリジナルでないことよりは戦争に影響をうけたことのほうがむしろ重要な指摘だろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか@ [bk1] 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか@Amazon.co.jp

つづく…

2010-08-21

エッシャーをとりあげた本はすくなくないが,この本はエッシャーの他の種類の作品もとりあげながら,おもにタイリングにもとづく作品をとりあげている. そこから話はペンローズ・タイルやイスラムや日本の文様につながっていく. 想像力や創造力を刺激される本だ.

評価: ★★★★☆

関連リンク: エッシャーとペンローズ・タイル@ [bk1] エッシャーとペンローズ・タイル@Amazon.co.jp

つづく…

日本からアメリカに特撮映画やアニメが輸入されていたが,歴史的,宗教的,社会的,その他の理由でうけいれられない部分があってカットされたり改竄されたりしていた. それにもかかわらず,著者をはじめ,おおくのアメリカ人がそれにひきつけられてきたことが,この本にえがかれている. 改竄されなければならなかった理由のなかには,宇宙戦艦ヤマトと米軍によって撃沈された戦艦大和との関係,性,暴力などだ. このあたりには,日本人には書けない部分が多々あるようにおもう. いまではインターネットを通じて,もつとナマの情報がはいるようになっているはずだ.

この本にはテレビ番組ワースト 50 にはいったという 「ピンクレディー・ショー」 や日本人についての誤解をまきちらした 「将軍 - Shogun -」 などについても書かれていて,おもしろく,かつかんがえさせられる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: オタク・イン・USA@ [bk1] オタク・イン・USA@Amazon.co.jp

つづく…

2010-08-23

アメリカのオタクやマンガ,アニメなどについてはよくつたえられているが,フランスのオタクの日本語での紹介は貴重だ. アメリカ人は文化に対しては保守的で,マンガやアニメもアメリカナイズされなければうけいれられなかったが,ヨーロッパでは… ということだが,フランスでもやはり日本のマンガやアニメは,暴力シーンを中心に,さんざん改竄されなければうけいれられなかったようだ.

原作は 1998 年に出版されているのでだいぶふるいが,文庫として 2009 年に出版されるにあたって,ジャパンエキスポなど,最近の事情についても書かれている. しかし,そこにそれほど目をひく内容があるわけでもない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ル・オタク@ [bk1] ル・オタク@Amazon.co.jp

つづく…

「模倣」 がおもなテーマになっているが,模倣される日本だけでなく,日本が外国を模倣するさまもえがかれている. 大学のゼミでのいろいろな話をまとめたということで,それほどまとまりのある内容ではない. とはいえ,スピルバーグが他人がつくったストーリーをまねて,いちはやく成功したさまや,日本での省エネ・スーツの失敗の歴史など,いろいろおもしろいエピソードがちりばめられていて,おもしろい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 模倣される日本@ [bk1] 模倣される日本@Amazon.co.jp

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2010-09-07

建築だけでなく,おおくのデザインにおいてコンピュータはなくてはならないものになっている. しかし,そのほとんどがコンピュータを単なる道具として,デザインにとって本質的ではない部分でつかっているにすぎない. 著者はコンピュータのパワーをもっとデザインの本質的な部分にいかそうとしている.

この本のおおくの章は概念的な記述や既存のアルゴリズミックなこころみの紹介などにあてられている. そこにはアルゴリズミック・アーキテクチャのさまざまな可能性がよみとれる. しかし,プログラムの例がしめされた,アルゴリズミック・デザインの具体的な適用例の章になると,当面,著者が興味をもっているのはアルゴリズムで生成される形態やその過程だけらしいことがわかってくる. そこでは建築が人間をつつみこむものであり,居住性,アメニティなどがめざすべきものだということは,わすれられているようにみえる. コンピュータにさせるべき仕事はこういう目的と形態とをうまくつなぐことなのではないだろうか. 失望させられる内容だった.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: アルゴリズミック・アーキテクチュア@ [bk1] アルゴリズミック・アーキテクチュア@Amazon.co.jp

つづく…

廃墟をうつした写真集は多数ある. そのなかには,こちちよく見ていくことができるものもあるのだが,この本はむしろ,きもちわるくなってしまう. それは,この本が廃墟を美化していないということなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 廃墟遊戯@ [bk1] 廃墟遊戯@Amazon.co.jp

つづく…

著者のおいたちや経験をおりまぜながら,さまざまな建築,プロジェクトについての見方がしめされている. そのなかには,注意をひきつける,さまざまな書物からの知識やひとの話などもある. 「イースト吉祥寺」 に関して 「街の悪所を雑菌とみなし,[中略] 無臭・無菌に突き進むデオドランド社会の危険性を訴えた」 という部分には共感した. しかし,全体としてはなぜか混沌とした印象だ.

最後の章には,大宮の再開発にあたっての著者のグループによる分析や提言が記述されている. こまかく分析され,さまざまな事業が提案されている. しかし,ここでもなにか,うまくかみあっていないものを感じてしまう. 謎の本だ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 知能化都市@ [bk1] 知能化都市@Amazon.co.jp

つづく…

2010-09-10

アニメーションの歴史,分類,日本と海外のアニメーションの代表例などがまとめられていて,大学で講義ができるくらいの内容はあるだろう. しかし,日本ではアニメーターがくらしていけるだけの収入がえられない,ということは大学でアニメーション学をまなぶ動機もないということだろう. アニメーション「学」をそだてるまえにアニメーションそのものをちゃんとそだてていく必要があるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アニメーション学入門@ [bk1] アニメーション学入門@Amazon.co.jp

つづく…

2010-10-17

第 1 章はセカイカメラからはじまる. これは入門書としては適切だろう. しかし,第 1 ~ 2 章のなかに AR のためのプログラム・ライブラリの話まででてくるのは,ちょっとバランスがわるいようにもおもえる.

iPhone やケータイでアクセスできる AR についてはよく書いてあるが,もっと先端的な事例や研究についても書いたほうがよかったのではないだろうか. この本にたりないのは 「感動」 だ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: AR〈拡張現実〉入門@ [bk1] AR〈拡張現実〉入門@Amazon.co.jp

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2010-11-13

著者は世界中で笑顔の写真をとりまくり,それをつかった 「MERRY」 と題されたイベントのシリーズをひらいてきた. 著者は就職して以来の 「デザイン」 の仕事をこの本でたどっているが,「MERRY」 は単なるデザインやイベントのわくをこえている.

著者がカメラをむけるとき,またイベントをひらくとき,笑顔でなかったひとたちが笑顔になる. 著者が挑戦するとき,不可能だったことが不可能になる. そういう内なるちからはこの本の文体からも感じられる. 「奇跡」 ということばはあまりに軽くつかわれることがおおいが,この本にはふさわしいのだろう.

評価: ★★★★★

関連リンク: デザインが奇跡を起こす@ [bk1] デザインが奇跡を起こす@Amazon.co.jp

つづく…

2010-11-26

金沢 21 世紀美術館がおおくの入場者をあつめていることはよく知られているが,この本はそれを実現した館長すなわち著者のかんがえかたや経験を書いている. 著者のアメリカなどでの経験が 21 世紀美術館にいかされていること,市長などに理解されまかされていること,建築家とのコラボレーションがうまくいったことなどが成功につながっているのがよくわかる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 超・美術館革命@ [bk1] 超・美術館革命@Amazon.co.jp

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2010-12-27

タイトルからは電子書籍に関する本であるような印象をうけるが,実際はおもに本のなかみ,とくに小説についての本だ. 「メロス」 もとりあげられているが,もっと最近の作品に関するものがおおい. 著者も 「「電子ブックの未来」 みたいな文章が含まれていない」 と書いているが,こういうタイトルをつけるなら,ケータイ小説くらいはとりあげてもよかったのではないかとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 紙の本が亡びるとき?@ [bk1]紙の本が亡びるとき?@Amazon.co.jp

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2011-01-07

巻末に解説を書いている東浩紀によれば,この本は先駆的なオタク分析だという. マンガやアニメだけでなく,オタクへのインタビューやアウトサイダー・アーティストのヘンリー・ダーガーの紹介など,さまざまな内容をふくんでいる. ヘンリー・ダーガーをとりあげているのは彼をオタク文化の先駆者ととらえているからだ. 東も書いているように,この本は,こうしたさまざまな十分には整理されていない内容をふくんでいるがゆえに読者に対してさまざまな可能性をひらいていて,おもしろいということができる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 戦闘美少女の精神分析@ [bk1]戦闘美少女の精神分析@Amazon.co.jp

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2011-01-08

この本の内容は 2002 年にはだいたいできていたというが,出版されたのは 2009 年だ. 最近の変化はとりいれられていない. 30 年前をかんがえてみれば,30 年後のメディアのかたちを予測するのがどれだけ困難かがわかるが,著者はあえてタイトルに 「2030 年」 をいれている.

著者がとらえているのはおもに,大型コンピュータからパソコンへというような,「集中」 から 「自律・分散」 へのながれだ. グーグルやアマゾンにはふれているが,それらがもたらした,ある意味での分散から集中への逆行にはふれていない. 著者にとっては 1 人 1 人にとって最適なサービスが提供される (つまり,マス・カスタマイゼーション) ことであり,サービス提供者が寡占的かどうかが問題ではないのだろう. しかし,それならもうすこし説明をくわえてもらわないと,うまく理解することができない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 2030年 メディアのかたち@ [bk1]2030年 メディアのかたち@Amazon.co.jp

つづく…

2011-01-15

タイトルからは,これまでにないあたらしいメディアの登場について書いているような印象をうける. 「プロローグ」 にもグーグルが登場し,「その次」 を予感させる. ところが,著者は新聞やテレビなどの従来のメディアの現状から未来をなぞり,政府の政策をなぞる. これがメディアの未来だとしたら,あまりに退屈ではないか?!

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 次に来るメディアは何か@ [bk1]次に来るメディアは何か@Amazon.co.jp

つづく…

本の判型から装丁,校正,活字とフォントなど,はばひろく,「なつかしい」 話題にふれている. だが,電子化されるであろう本の未来をかんがえればもちろん,現在をかんがえても,もう本づくりの中心からはずれてしまった話題がおおい. 編集者の仕事としては著者との共同作業など,もっと内容にかかわる部分がまずあたまにうかぶが,そういう部分についての記述はすくない. 本の物理的な部分にも興味はあるが,すこし期待はずれだった.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 編集者の仕事@ [bk1]編集者の仕事@Amazon.co.jp

つづく…

2011-01-25

最近,オペラの DVD をいくつか買ったこともあり,「つんどく 」していた音楽関係の本のなかから,この 1 冊をひろいだした. モンテベルディからショスタコービッチまで,70 ちかいオペラ作品の DVD や CD が紹介されている. 最近の本だけあって紹介されたメディアの半数は DVD であることが,ありがたい.DVD であれば歌手や舞台がみられるだけでなく,字幕がみられることがおおきい. ただし,字幕がないものや日本語がないものも紹介されているようだ.

バロック時代からとりあげられてはいるが,モンテベルディにしても,解説はみじかく,それらの文章はあまり魅力的でない. それとくらべると,ベルディなど,近代イタリア・オペラの紹介には熱がはいっていて,買いたくなる.

ショスタコービッチまでとりあげてはいるが,プッチーニよりあとのオペラはすくない. ベルクについてもヴォツェックはとりあげているが,ルルはとりあげていない. 日本の作曲家もいろいろオペラを書いているが,それもとりあげていない. 新書としてはすでに 300 ページもあって,これ以上ふやせないのだろうが,もっとあたらしい作品もとりあげてほしかったとおもう.

モーツァルトについてもみじかい解説がおおいが,アーノンクールの演奏をつよくすすめている. 半世紀くらいまえの演奏もすくなからずとりあげられているが,モーツァルトだけでなく,このようなあたらしい演奏をおおくとりあげている. あとがきには,いま,あたらしい演出への変化がおこりつつあり,それを紹介することが目的のひとつだったように書かれている. ふだんはあまりオペラに親しんでいない私にとっては,オペラの現在を知るうえで,とてもよかった.

評価: ★★★★☆

関連リンク: オペラの名盤@ [bk1]オペラの名盤@Amazon.co.jp

つづく…

2011-01-30

著者はその父がたてたこまばアゴラ劇場の億単位の借金を 23 歳のときに背負って出発したという. そういう著者は芸術と市場経済とのかかわりにもするどい感覚をもっているようだ, 著者は桜美林大学でおしえているが,「学内の演劇の公演は基本的にすべて有料で上演するように指導している」 という. どうすればチケットが売れるかをかんがえるのが重要だからだ.

著者はまた,演劇をはじめとする芸術の公共性を論じている. アメリカでは荒廃した地方都市の再生・再開発に芸術がつかわれて成功した例があるというとこから,日本でも中心街がシャッター通りとなり画一的な 「郊外」 でかこまれた地方都市において芸術がやくわりをはたすのではないかとかんがえている. そこでは,公共的な支援とともに,市民の参加が重要になる.

この本が出版されてから 10 年ちかくになるが,そのあいだに日本各地でビエンナーレ,トリエンナーレなどというもよおしがひらかれるようになった. それらは演劇とのかかわりはうすいだろうが,著者がかんがえていた芸術による地方の振興や市民参加を実現しているといえるだろう. 著者がのこしたするどいメッセージを,このようなこころみのなかに,さらにいかしていけるようにおもえる.

評価: ★★★★★

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つづく…

2011-02-03

越後妻有でひらかれる 「大地の芸術祭」,その企画や作品の制作,地元住民との交流などを作品中心にえがいている. ここでえがかれた芸術祭はすでにおわっているが,作品をみただけではわからないさまざまなエピソードを知ることは,つぎの 「大地の芸術祭」 をみるときに参考になるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 大地の芸術祭@ [bk1]大地の芸術祭@Amazon.co.jp

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2011-02-05

冒頭に 「いいものさえつくっていれば売れる」 というまちがったかんがえに編集者はおちいりやすいと書かれている. 製造業といっしょだ. しかし,実際には編集者がいいとかんがえても売れない本はたくさんある.

この本でとりあげられているのは 「売れる」 本や雑誌たちなのだろう. しかし,この本に書かれているのは編集者がなにをかんがえて本や雑誌をつくってきたかだ. それらがなぜ売れたかはこの本を読んでもわからないし,おなじことをやってももう売れないだろう. たしかにおもしろい話はいろいろあるが,どううけとめたらよいのだろう.

最初の版は 2006 年に出版されているが,電子書籍を意識せずに書けた最後の時代かもしれない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 本を作る現場でなにが起こっているのか!?@ [bk1] 本を作る現場でなにが起こっているのか!?@ [bk1]本を作る現場でなにが起こっているのか!?@Amazon.co.jp本を作る現場でなにが起こっているのか!?@Amazon.co.jp

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2011-02-12

著者はグーグルのこともよく知らなかったが,自著の本の著作権がおびやかされていることを知って怒り,すぐに行動をおこす. そして,「黒船」 がうちはらわれるまで,ずっとたたかいつづける. この本はその過程を書きつづったものだ.

「グーグルブック検索事件」 に関して第 3 者が書いた本はいろいろあるが,当事者のナマの声はそれらとはちがって,読者につよくひびく. もちろん,当事者だからこそ知っていることもある. この事件そのものは,もはやすぎさったことだ. しかし,今後のグーグルをみる視点としてもやくにたつだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: グーグルに異議あり!@ [bk1]グーグルに異議あり!@Amazon.co.jp

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2011-02-19

専門家ではなく IT ジャーナリストが書いた AR 論だ. だから,AR の技術よりは社会,とくに広告などのビジネスが中心の話題になっている. セカイカメラやそれに類するサービスにかなりのページがさかれているが,こういうサービスはセカンドライフと同様にあまりパッとしない.

むしろ,本書でもふれられている 「AR 空間を整備することで,現実空間の人の流れを意図的に変えようという試み」 のほうが興味ぶかい. つまり,AR をみているひとの数はかぎられているので,他のひとにどれだけ影響をあたえられるかが勝負だとおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: AR@ [bk1]AR@Amazon.co.jp

つづく…

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